みなさんは、まだ下水道システムがない場所には、ぜひ整備すべきだと思いますか?
「全てに普及すべき」と感じるかもしれませんが、実は、それはちょっと違うようです。
たしかに下水道は本当に素晴らしいシステムです。
何がすごいかというと、何百万人もの人々が隣り合わせに住み、定期的に大量の潜在的病原体を排泄しているにもかかわらず、その悪いものはすべて安全に流され、衛生的に処理されているからです。
実際に、下水道がない場所では、排泄物中の病原体がそのまま残り、多くの人々を病気にし、毎年50万人以上が命を落としています。
では、なぜ下水処理システムが不要、または、未だに普及していない地域があるのでしょうか?その理由を以下にみていきましょう。
下水管のメンテナンスにはお金がかかる
下水道システムは素晴らしいものですが、いくつかの欠点もあります。
第一に、下水道管は気温が低下したり、天候や災害、交通渋滞による負荷がかかりすぎたりすると、どうしても亀裂や破損が起こりやすくなるからです。
そのため、下水道を効果的に活用するには、地下深くに下水管を埋めなければなりません。
それは、下水処理システムを維持・管理するためのメンテナンスに多額のコストがかかることを意味します。
そして、下水道が有効であるためには、病原体を確実に破壊できる処理施設も用意しなければなりません。処理施設や下水道管を敷設するために莫大な建設費が必要となるのです。
大量の水が必要
下水道は、病原体を含む排泄物を流すことで機能するため、大量の水が必要となります。
それらを考慮に入れると、世界には下水道施設を作るのに適さない地域もあります。
下水道施設を作るのに適さない地域とは
高価な下水道を設置し、それを維持する資金をつくるのが難しい地域、水洗に必要な水がなく乾燥しやすい地域、モンスーンや洪水などの災害で処理場が押し流され、地元の水路に排泄物が流れ込むことの多い地域などです。
実際に、下水道を利用できない25億人のほとんどは、このような地域に住んでおり、下水道は意味をなさないものと考えらえています。
では、このような場所で排泄物を処理するためのより良い選択肢はあるのでしょうか?
下水道に代わる選択肢とは
施設が整っていない地域で何が起こったかを見てみましょう。
十分に整備された大きな電力網や電話網を建設する必要がない代わりに、私たちは今、太陽や風の力を借りて電力線なしで人々に電力を供給し、電話線なしで電話サービスを提供する能力を得ています。
これを下水道で考えると、浄化槽や竪穴式便所など、下水道管を必要としない処理の選択肢はすでにいくつかあります。
しかし、どれも実際に病原菌を殺すものではありません。
つまり、もしこれらの方法を広く普及させれば(特に人口の多い場所では)、頻繁に浄化槽のそうじをする必要があり、人々はしばしば病原菌にさらされやすくなってしまう恐れがあるのです。
さて、世の中には下水道システムに代わる素晴らしいアイデアもあります。
例えば、太陽の光を集めて排泄物をを燃やし、無害な炭にするソーラートイレ。
排泄物を圧力処理して無害で小さな塊にする真空トイレもあります。
そして、排泄物を沸騰させて無害な汚泥の山にするスチームトイレと呼ばれるものもあります。
さらに、一度処理された排泄物は、肥料や燃料として使えることも多いのです。
これらの賢い下水処理法はまだ広く普及されてはいませんが、これからの処理方法として大きな可能性を秘めたものだといえそうですね。