宇宙には、太陽よりもはるかに大きく高温の星々が何十億個も存在しています。
それにもかかわらず、宇宙空間は信じられないほど冷たいのはなぜでしょうか?
それは、宇宙には、惑星やその他の天体を除いて、熱の移動を促すような物質は存在しないからです。
宇宙空間にある物体は、熱源や放射源から遠く離れているため、得られる熱よりも失う熱の方が大きくなります。
たしかに高温の星はたくさんありますが、それぞれが遠く離れすぎており、宇宙全体を完全に暖めるには、熱い星の数が足りないのです。
以下に、宇宙が冷たい理由についてより詳しくみていきましょう。
宇宙には無数の恒星がある
太陽系には、自らのエネルギーで輝き、大量の熱を生みだす「恒星」が、太陽という星ひとつしかありません。
正確には、太陽は私たちから1億4960万kmほど離れています。
1秒間に30万kmを移動する光でさえ、太陽から私たちに届くのに8分もかかるほど遠いのです。
しかし、これだけの距離があっても、夏の日中は、太陽が私たちの真上にあるように感じるほど気温が高くなります。
離れたところにあるたった一つの星が、私たちの惑星をこれほど素早く加熱することができるのだとしたら、それが複数になったらどうなるのでしょうか?
太陽の次に近い恒星として知られるプロキシマ・ケンタウリは、地球から4.246光年の距離にあります。
実は、この恒星系は、ケンタウルス座アルファ星として知られ、3つの恒星からなり(三十連星)ます。残りの2つはアルファ・ケンタウリaとアルファ・ケンタウリB。
興味深いことに、私たちは、夜空を見上げると肉眼で5000個に相当する恒星を見ることができます。
それは肉眼で見える星の数であり、より高度な宇宙望遠鏡を使えば、何十億にもおよびます。
宇宙には、太陽の数万倍の大きさにもなる恒星が無数にあり、そのすべてが膨大な量の熱を放射しているとすれば、宇宙は暑い場所と考えるのが妥当でしょう。
しかし、宇宙空間はとても冷たいと考えられています。
そして、その答えのひとつは、熱の移動方法にあります。
3つの熱の移動方法
熱の伝わり方とは、ある物体やシステムから別の物体やシステムへ熱が移動するプロセスのことです。
そして、両者の温度差により熱の移動が起こる主な方法には「伝導、対流、放射」の3つがあります。
ガスコンロで鉄板の片面だけを加熱しても、鉄板全体が熱くなりますが、これが伝導による熱移動の例です。
鍋の底に熱を加えると、鍋の中の水全体が熱くなるのが対流。
そして、暑い夏の日、外で体験する太陽の灼熱が放射の例です。放射のおもしろいところは、熱伝導や対流と違って、熱源と物体が接触する必要がないこと。
宇宙には熱を蓄えたり伝えたりする物がない
まず、宇宙には、熱を伝える大気がないため、物理的にいう最も冷たい温度「絶対零度」に近い-270.45°Cととても低温です。
厳密には、宇宙空間にはわずかに分子があるため、絶対零度(すべての分子運動が停止する-273°C)は実現不可能だといわれています。
真空中では、物質を介して熱を伝える「熱伝導」や「対流」は起こりません。
熱源によほど近くない限り、宇宙にあるものはすべて冷たいのです。
また、宇宙にある物体は、電磁波などの形で熱を放出する「放射」によって絶えず熱を失っているため、やがて冷たくなります。
地球がたえず暖かいのは、大気が太陽からの熱を閉じ込め、毛布のような役割を果たしているからです。
また、大気のほとんどない月で、太陽があたる昼間と夜の温度差が大きいのは、太陽によって暖められた熱を夜に失い、朝に再び熱せられているからです。
とはいえ、何もない空間にも原子は存在するはずです。
星や惑星から遠く離れた宇宙空間でも、極めて薄くはありますがガスで満たされており、宇宙空間には何十億もの高温の星があるのに、なぜ宇宙は冷たいのでしょうか?
星と星との距離が遠く離れている
まず、星は、すべて集まっているわけではないからです。
たしかに、恒星は高温ですが、互いに何十億kmも離れており、それらの間に大きなスペースがあるため、宇宙空間全体を加熱することはどう考えても不可能なのです。
太陽に最も近い恒星、プロキシマ・ケンタウリでさえ、地球から4.3光年あります。時速100km近いスピードで走っても、地球から到達するまでに4800万年以上かかります。
恒星が宇宙全体を暖めることを期待するのは、裏庭の焚火が国全体を暖めることを期待するようなものなのです。
今回紹介した宇宙が冷たい理由については、以下の動画で見ることが出来ます。