ソクラテスよりも前の哲学者、タレス。
彼は、紀元前6世紀に巨大なピラミッドの高さを測定した人物です。
しかも彼が使ったのはただ1本の棒。とてつもなく長い巻き尺でもなく、高さを測定するための特別な道具でもありません。
以下に、当時のエジプト王をも感心させたタレスの測定方法を紹介します。
「哲学の父」タレスとは
タレスは、紀元前623年頃に生まれたギリシャの哲学者で、古代ギリシャの七賢人の一人。哲学、歴史、科学、数学、工学、地理、政治など多岐にわたる興味を持っていました。
超自然的な信仰に頼る代わりに、自然界で観察した出来事に対して実際的で合理的な説明を示そうとした人物でもあります。
彼はイオニア地方のミレトス自然哲学学派の開祖であり、西洋文明において数々の問いに科学的アプローチをとった最初の人物として知られています。
ピラミッド観光に訪れたタレス
旅を好んだタレスは、あるとき、ピラミッドを見るためにエジプトに行きました。
ピラミッドはタレスが生まれる少なくとも2000年前に建てられたもので、彼の時代にも古代の観光名所でした。
そこでタレスは、多くの観光客と同様に、巨大なピラミッドの高さを知りたくなりましたが、誰もその答えを知らなかったため、自分で考え出しました。
では、紀元前6世紀に、彼は、巨大ピラミッドの高さをどのように測定したのでしょうか。
巨大ピラミッドの高さの測定方法「三角形の相似」
研究者たちは、タレスはある方法を使ってピラミッドの高さを計算したと考えています。
それは三角形の相似に関するものでした。
これらは同じ形ですが大きさの異なる三角形です。
対応する角度は同じで、対応する辺の長さは異なりますが、辺の比率は同じです。
ちなみに中学の数学では、相似条件を以下のように習いましたね。
相似条件
- 3組の辺の比がすべて等しい
- 2組の辺の比が等しく、その間の角が等しい
- 2組の角がそれぞれ等しい
タレスの測定方法
では、タレスがどのように測定を行ったかを見てみましょう。
ピラミッドの高さを見つけるために、彼はまず、棒を地面に押し込んでまっすぐに立たせました。
彼は棒の高さと棒の影の長さを注意深く測定し、次に大ピラミッドの影を測定しました。
このようにして、対応する角度が同じ似三角形を形成。
これで、ピラミッドの高さと棒の高さの比率は、「ピラミッドの底辺の長さの半分とピラミッドの影の長さを加えたもの」と「棒の影の長さ」の比率に等しくなります。
簡単な計算の後、タレスは、ピラミッドの高さは現代の単位で146.5メートルであることを導き出しました。
ピラミッドの高さは、後に浸食されたため、現在は138.8メートルといわれています。
後に、哲学者プルタルコスはこの出来事について書いています。
タレスはピラミッドの影の端に棒を立て、太陽光線による2つの三角形を作り、ピラミッドと棒の比率がそれぞれの影の比率と同じであることを示したのです。
エジプト王は、巨大なピラミッドの高さを特別な道具も使わずにたやすく測定できるこのタレスの方法を気に入ったといいます。
さらにタレスは、この三角形の相似の理論を使って、沖にある船までの距離も求める方法も示しています。
タレスは、はるかに高いものの高さや遠いものまでの距離を測定するために、とてつもなく長い巻尺は必要なく、棒と定規と少しの創意工夫があればよいことを教えてくれました。
タレスのピラミッド測定方法については、以下の動画でみることができます。