花粉は、植物の精子、または何らかの植物の生殖器であると聞いたことがあるかもしれませんが、実はそうではありません。
花粉を植物の精子だと考えているのなら、それは大きな間違いです。
もちろん植物にも精子はありますが、花粉には精子は存在しません。花粉は小さな雄の植物であり、精細胞(動物でいう精子)をつくることができる雄性配偶体なのです。
花粉は、粉のようになった細胞で、めしべの先端にたどりつくとそこで発芽して、胚のうに向けて花粉管を伸ばし、そのなかで精細胞をつくって胚のうの中の卵子と受精させるのです。
繰り返しますが、花粉自体が受精をするわけではありません。
それに対して、精子は親からのDNAを1セットもつ雄の生殖細胞です。
以下に、花粉が精子とは違う理由を分かりやすく紹介します。
花粉が必要な理由
精子には、適度に湿った環境が必要で、完璧な条件下でも数時間から数日しか生存できません。
そのため、種が精子を効果的に受精に利用するには、とても近づくか、(卵子に遭遇する前に精子がしばらく生存できる)水中にいる必要があります。
しかし、樹木などの開花植物は、水中には生息せず、雌と雄とが直接接近することもできないため、精子を発射するだけでは受精はうまくいきません。
ここで花粉の出番です。
花粉と精子の違い
精子と同様に、花粉には親からの1つのDNAセットが含まれていますが、精子とは異なり、花粉自体は複数の細胞で構成された独立した生きた植物(多細胞生物)であり、種によって適切な条件下では数か月間生きられます。
一方で、精子はそのような自由を夢見ることしかできません。
木と花粉の話に戻ります。
この小さな雄の植物「花粉」は、世界に放出され、同じ種類の植物の雌にある胚のうと呼ばれる植物と出会うまで生き続けます。
胚のうも花粉も、植物の生殖に大切な働きをする配偶体なのです。
受精
胚のうは、基本的に家(花)を出ることはありません。
花の中にとどまり、花の一部ではなく、花の中に生息する別の植物が胚のうなのです。
花粉が胚のうに出会うと、しっかりとひっつくために花粉管と呼ばれるパイプを作ります。
花粉管は、胚のうの内部からの分泌物に誘引されて、浸透圧を調整しながら管を伸ばして胚のう内に向けて侵入します。
ここで精子の出番です。この時点で、花粉はちょうど2つの精子細胞を生成し、胚のうにパイプで送ります。
その間に、胚のうは精子が出会うことができる卵子を生み出します。
つまり、花粉は、受粉と呼ばれるプロセスで初めて精子を作り、花粉管によって卵子の近くまで精子を送り届けるのです。
受精すると、その卵子は胚のうの中で胚に成長します。これが名前の由来です。次に種子になり、運が良ければ新しい植物になります。
この植物は2セットのDNAを持ちます。
そして、植物は十分に成長すると、新しいDNAセットを持つ雄植物(花粉)を作るのです。
精子と花粉の違いについては、以下の動画で見ることができます。