私たちは、冬になったらセーターを着て、温かいものを食べて、体を温めることができます。なかには、こたつやストーブの側から離れられない人もいるかもしれません。
それでは、魚や植物は、極寒の冬になると一体どうなってしまうのでしょうか?
うして魚は冷たい水の中でも凍え死ぬことはないのでしょうか?どうして植物は氷点下でも凍結しないのでしょうか?
ここでは、魚や植物が冬に備えてどのような準備をし、気温が氷点下になった時にどうなるのかについて、分かりやすく紹介します。
どうやら魚や植物は、冬の寒さにただ耐えるのではなく、それぞれが驚くような仕組みを持って体を変化させ、厳しい環境を乗り越えているようです。
気温が氷点下になった時に魚はどうなるの?
幸いなことに、外の気温が氷点(凝固点:水が凍るセ氏0度)を下回った場合でも、湖沼や河川が凍りつくのは、水の上層のみであるため、水の中の生き物は生きていくことができます。
凍ってしまった氷の層の下には、水が液体のまま存在しており、酸素も十分に閉じ込められているので、魚が生き残れる環境が提供されてはいますが、実際には、冷たい水や食料不足などの不利な条件が、生態活動を鈍らせていきます。
例えば、タラやヒラメ、カレイなどの特定の種は、水温が低くなると代謝率が低下し、体液中に凝固点になっても凍らないための分子を生成して対応します。
細胞が凍るということは、そのまま死につながるため、体内の凝固点を下げて凍らないように対応しているのです。
それでは、植物はどうでしょうか?
私たちが、寒い冬に備えて、衣替えをしたり、ストーブを出したりするのと同じように、植物も来るべき厳しい寒さに向けて準備を整えていきます。
秋になると、植物の葉が枯れて、落ちるのを見たことがありますか?
これは、実際に冬に備えて行われる「離層」と呼ばれるプロセスの一部です。
植物は、太陽の光を浴びて光合成を行い、必要な栄養素を作り出していますが、冬になると太陽光が不足して光合成量が落ち、次第にクロロフィルと呼ばれる緑色の色素も失われていきます。
落葉樹は、できる限り栄養や水分の流出を防いで蓄積し、最小限の代謝活動で生き残っていくために、葉と幹の間に仕切りを作って栄養の道を絶ちます。
その結果、葉に残っていたクロロフィルが全て分解されてしまうと、次第に赤く色づいて、最終的には落ちていきます。
どうして植物は、冬がくることが分かるのか?
植物は、ストレスの要因となる寒さに対して、より効率的に反応するために「ストレスの記憶」を持っているといわれています。
多くの異なる環境ストレス要因が、植物の染色体や遺伝子を制御する部分の働きを変化させて、再度同じようなストレスが訪れた時にうまく対応できるように、1回目の記憶を忘れないために、染色体内に証拠を残します。
そのため、植物は、染色体内にある「ストレスの記憶」をもとに、冬の訪れを敏感に察知し、冬に備えることができるといわれています。
植物は、冬に備えた後、実際にどのようにして生き残っているのでしょうか?
植物は、気温が氷点下になった時に、細胞自体が凍ったり、細胞内に氷ができて細胞核や葉緑体などが傷つけられることを防いで、身を守らなければなりません。
多くの植物は、細胞自体が凍るのを脱水メカニズムによって防いでいるといわれています。
脱水メカニズムとは、気温が下がった時に、細胞内の水分を、細胞と細胞の間に移動させることです。細胞内が凍ってしまうのは、植物にとって致命的ですが、細胞外が凍るだけなら生き残れる可能性があるため、氷ができる場所を変えているのです。
これは、植物の細胞壁が、動物の細胞壁よりも強い理由にもなっています。
また、いくつかの樹木は、冬の凍結と闘うために、水が主成分であったはずの細胞内の液体を、脱水後に、はるかに多くの糖が含まれるように変えていきます。このようにして、細胞内の液体における糖分の含有率を高めることで、凝固点を低くして、凍りにくくしているのです。