「愛してる」、「あなたに夢中」こういった言葉は、アニメや映画の世界ではよく見られますが、現実に愛は人間の世界でどのように作用しているのでしょうか?
「愛」というと哲学的なテーマである印象が強いかもしれませんが、研究者が科学的に分析していくにつれて、非常におもしろいメカニズムが分かってきたのです。
たとえば、恋をすると不安になったり、好きな人を目の前にすると心臓がドキドキしたりするのにも理由があり、それらは脳の神経伝達物質の影響を受けています。
ここでは、愛の正体について脳科学などをもとに科学的に分かってきたことを分かりやすく紹介します。
科学的に分析した愛の正体
まず、脳科学での「愛」の分析からスタートしていきましょう。
科学者は、人が恋に落ちたときの症状は、脳の中枢神経系で働く3つの主な神経伝達物質、ドーパミンとセロトニン、アドレナリンが関与していると信じています。
これらの三大神経伝達物質は、人の精神状態や記憶、運動機能、食欲や睡眠といった、重要な生命活動に深く影響を及ぼしています。
恋をするとドーパミンやアドレナリンが分泌される
ドーパミンは、脳にコカインと同じような影響を与える報酬系の快楽物質です。
ドーパミンの分泌レベルが高いと、意欲が高まって体がエネルギッシュになり、空腹が抑えられ、集中力が高まります。さらには、睡眠をあまり必要としなくなるので眠れなくなったり、食欲がなくなったりすることもあります。
人は、誰かに恋に落ちると心身が(戦闘状態に)覚醒され、ストレス反応が活発化して血中のアドレナリン値とコルチゾール値を上昇させます。それが、愛する人を前にすると心拍数が上がる由縁です。
精神を安定させる「セロトニン」ホルモンの低下
恋をすると、ドーパミンやアドレナリンとは逆に、脳内のセロトニンは低下します。セロトニンは、ドーパミンやアドレナリンの過剰分泌による依存症や過小分泌による気力低下を抑制して、精神状態を安定させる役割がある。
そのため、セロトニンが低下すると、精神状態のバランスが崩れ、ネガティブ思考で神経質になり、不安感が大きくなるなど強迫性障害のような症状がでやすくなります。
そして、これらの神経伝達物質は、フェロモンに作用します。
フェロモンとは
フェロモンとは、人間や動物が生成する物質で、周囲の人間や動物のふるまいに影響を与えるといわれています。遺伝的に親から受け継がれたもので、皮膚から排出され、汗や涙などに含まれています。
驚いたことに、フェロモンは、遺伝子レベルでの好みの異性を引き付ける役割があるようです。
匂いで異性を引き寄せるフェロモンの役割
スイスの動物学者が行った研究では、女性の心拍数の変化を調査した結果、男性の着ていた服の匂いによって、好みの相手かどうかを敏感にかぎわけることが分かりました。
さらに、好みの相手とは、女性自身の遺伝子と最も異なる遺伝子の型をもつ男性であることも解明されました。これは、子孫を残すために、遺伝子型が近い異性を遠のけ、全く異なる遺伝型と結ぶことで免疫を強化するためではないかといわれています。
このようにして、私たちは、感覚的なものを使って、本能的に異性を魅了しているわけです。
本能と恋愛のメカニズム
嗅覚だけでなく、視覚や聴覚、触覚も同様に、異性を引き寄せる重要な要素と位置付けられています。
私たちの本能は、異性の艶やかな髪や透明感なる肌といった外観だけでなく話し方や匂い、触れたときの感触など五感が全て組み合わさって働きかけられたとき、脳が活性化して、恋愛ホルモンと呼ばれるノルエピネフリンの分泌を増やします。
ノルエピネフリンの働きは、好みの異性に視線をロックし、まるでトンネルビジョンのように視野を狭くして、異性一点に意識を集中させる手助けをします。
恋をすると他のことがどうでもよくなったり、好きな相手しか見えなくなってしまうのはそのためです。
そして、あなたの時間感覚をゆがませ、好みの異性に関わる新しい知識を保存するために、長期記憶の形成を促進します。
どうやら、人間にとって愛や恋といったものは、子孫を残すために本能的に体に組み込まれたものであるようです。