なぜオウムはものまねが上手なのか?

2018年8月10日

誰かに何かを伝えるために「音」を出すとき、わたしたちは通常、「バナナ」や「私」といった単語を組み合わせて、「私はバナナをお店に買いに行く」というように文章にまとめて言葉で表現します。

そして、ご存知の通り、ほとんどの動物は鳴き声で表現するだけで、私たちのような文章は使いません。

しかし、「鳥」だけは違います。

インコやキュウカンチョウ、ヨウム(アフリカの大型インコ)のような鳥は、人間と一緒に過ごすうちに、人が発する「音(声)」をまねて相手に返すようになります。ときには、人間をまねて、文章を話すトレーニングさえできるのです。

そのようなとき、鳥は自分の言葉の意味を本当に理解しているのでしょうか?それともただ音をまねているだけなのでしょうか?

実は、その両方である可能性があるようです。

ここでは人間の声をまねる鳥について、彼らが発する言葉の意味やモノマネが上手な理由などをもとに、科学的に分かりやすく紹介します。

鳥が音をまねるのが上手な理由

生まれたばかりの鳥のヒナは、家族や群れにいる他の鳥の鳴き声を聞き、それらの音をまねようと繰り返し練習します。

鳥が鳴き声をまねるのには、さまざまな理由があると考えられています。

一つ目の理由は、野生の鳥はお互いに助け合って生きているために、社会性がとても重要になるからです。

種が違っても、同じ種類の鳥であっても、属する群れが違えば、お互いの呼び方も合図も異なります。

このように鳥は、音の違いによって、敵を識別して自分の家族を確認したり、捕食者による危険を知らせ合ったり、縄張りを主張するなど、強い社会的なつながりを有効に形成していると考えられています。

なかには、他の動物の鳴き声をマスターして、天敵を脅かして追い払おうとする鳥もいます。

とりわけ異性への求愛においては、モノマネが上手な鳥は、頭がよくて記憶力が高く、強い筋肉をもつことをアピールできるため、群れ社会で暮らす鳥にとっては、大きな魅力のひとつとなります。

人間のモノマネが上手な鳥

鳥のなかには、人間の言葉を上手にまねる才能豊かな鳥もいます。ヨウムやオカメインコのようなオウム科と、キュウカンチョウやムクドリ、ヒバリのようなスズメ亜目の鳴禽類(めいきんるい)の2つのグループの鳥です。ちなみに、カラスも鳴禽類のひとつ。

彼らは本当にモノマネが上手で、ときには、人間でさえだまされてしまうこともあるほどです。

実際に、ペットとして飼われた鳥が逃げ出して、人間から学んだ言葉を、新しい群れで他の鳥に教えることも知られています。

山歩きをしているときに、そういった鳥が「こんにちは、マイク」というように、名前を呼ぶのを聞いた人もたくさんいます。もちろん見渡したところで、鳥以外はだれも見当たらないため、耳にした人はみな困惑してしまうようです。

「人間が話す言葉」と「鳥がまねる言葉」の違い

ペットの鳥たちが、私たちの話し方をまねるのは、鳥の社会性によるものだとすると、飼い主を群れの仲間だと思い、できる限り同じ音を出そうとしているのも納得できます。

特に幼い頃から人間に飼われている鳥は、何百もの言葉を学ぶことができるといわれ、実際に、100以上の言葉を話せる「アレックス」という名の有名なヨウムもいます。

なんとアレックスのトレーナーは、彼が欲しいものがあると「バナナが欲しい」というように、それを言葉で示す訓練もしたようです。

おそらくアレックスは、ある音(バナナが欲しいという声)を出すと、その次に何かが起こる(バナナがもらえる)ことを理解していたのでしょう。

これは、コミュニケーションの一形態になるかもしれませんが、厳密にいうと、人間がコミュニケーションで使用する言葉とは少し異なります。

なぜなら、人間の言葉は、もっと複雑で、さまざまな意味が込められているからです。

私たちも「バナナが欲しい」と、人間に飼育された鳥と同じような言葉を使いますが、その言葉には、「食べる前に手を洗ったり、バナナを食べるために準備したり」といったさまざまな考えが含まれています。

人間の話す言葉と鳥のまねる言葉には、その言葉に含まれた意味や背景に大きな違いがあるのです。

人間の発声をまねることができる奇妙な能力の正体

オウムのようなモノマネが得意な鳥には、人間が発する音を上手に作り出す奇妙な能力があります。

その秘密は、口の中を自在に動かして、さまざまな周波数の音を作り出す(調音できる)特殊な舌と、科学者たちに「音声学習(または発声学習)」と呼ばれている脳の神経システムによるものです。

鳥の音声学習

音声学習とは、耳で聞いた音を生成する能力で、これができる動物は少なく、鳥ではオウム目とハチドリ、そして、カナリアやカラスなどのスズメ亜目の鳴禽類(めいきんるい)だけだといわれています。

実際に、彼らが音声学習をどのように行っているのかまでは、明確には分かっていませんが、これらの鳥には共通して脳内に、運動を制御する脳の領域のそばに7つのニューロンの塊「核」があり、それは他の鳥には見られないことが分かっています。

そして、この7つの核は相互にリンクしながら、異なる繋がりを形成しています。

卓越したモノマネ能力をもつオウム

2015年の研究では、多くの異なる種のオウムの脳を調べたところ、ハチドリや鳴禽類にはないある特殊な「層」が全てのオウムで見つかりました。

それは、7つの核を、キャンディーのコーティングのように完全に取り囲んだ層で、この層が、モノマネの能力の高さと関係している可能性があります。

アフリカに住むモノマネの達人「ヨウム」は、他のどのインコよりもこの領域がはるかに大きいといわれています。

科学者は、核を取り巻くこれらの層の重複は、2900万年以上も前にできた可能性があると考えています。

人間が、洗練された言語能力を身につけたのは、その何百年も後であることを考えると、実際にモノマネをし始めたのは鳥ではなかったかもしれませんね。