現代人がお酒を飲む場合、昼間に飲む方がいいのか、夜に飲む方がいいのかについて、それぞれのメリットやデメリットを比較しながら紹介。
もし「ちょっとお酒を飲みたいなぁ」と思ったとき、あなたの生理機能にとって理想的な時間帯はあるのでしょうか?
アルコール。それは、脳内の特定の神経細胞の興奮を低下させ、体に影響を与えうる生物学的な副産物を伴う極めてポピュラーなもの。
実は、私たちの祖先は、何百万年も前から昼間にアルコールを摂取していたといわれています。
これが、ロバート・ダドリー博士による「The drunken monkey hypothesis(直訳すると酔っ払い猿仮説)」
進化の過程で、アルコールの一種が、私たちの祖先に食料調達のニッチを与え、活発に活動する時間帯のエネルギー補充に重要な役割をはたしてきたわけですが、一方で現代人にとってはどうなのでしょうか。
祖先に起こった「突然変異」がお酒を飲むきっかけになった説
今、あなたがお酒を飲むことができるのは、1000万年前にあなたの祖先に起こったある遺伝子の突然変異に起因すると考えられています。
あなたとチンパンジーの共通の祖先であるサルのような有胎盤類が、アルコールデヒドロゲナーゼという酵素に突然変異を起こし、この酵素のアルコール代謝能力が40倍になったのです。
このアルコール脱水素酵素の特定の突然変異により、少量のアルコールは毒ではなく、エネルギー源として利用できるようになりました。
また、この仮説では、私たちの共通の祖先が木の上での生活をやめて、地上での生活を始めたのが約1,000万年前であることにも触れられています。
この新しく変異したアルコール代謝酵素は、森床にある大量の発酵した果物を新たな食生活のニッチとして利用できるようになるという有益なものでした。
簡単にいうと、私たちの祖先は、おそらく昼間にこれらの発酵した果物を食べて、新しいエネルギーをたくさん得ていたのです。
カリフォルニア大学バークレー校のロバート・ダドリー博士の仮説によると、初期の霊長類(多くの果実を食べる動物)は、遺伝的にこのエタノール分子に惹かれる行動をとるようになったようです。
昼間にお酒を飲むデメリット
ウォッカを1ショット飲むと、アルコールの20%が胃で吸収され、80%が小腸で吸収されます。
その後、血流に乗り、肝臓で代謝されます。
エタノールは濃度差に応じて自然に細胞内に入るので、飲めば飲むほど早く酔います。
そして、アルコールが蓄積して最終的に脳に到達すると、興奮性の神経伝達物質であるグルタミン酸を抑制するため、脳内の情報伝達が遅くなり、大きな信号だけが伝達されるようになります。
そうなると、感覚が鈍り、知覚も鈍り、注意力や記憶力も鈍ります。
つまり、昼間にお酒を飲むと日常の仕事をいつも通りにこなすのが難しくなるということです。
一方で、お酒を飲むとカロリーエネルギーが増加し、昼間は目が回るようなエネルギーでウハウハになるかもしれません。しかし、それもすぐに消えてしまい、午後は無気力な状態になってしまうでしょう。
なぜなら、お酒を飲んでいるときに感じる興奮した外向性は、前頭前野の脳の発火が抑制されることによるものだからです。
脳のこの部分は、衝動をコントロールし、行動を抑制します。
したがって、アルコールがこの衝動を抑える部分を抑制することで、気が緩み、少しだけ外向的になっているだけなのです。
残念ながら、この酔っぱらいの外向性は、肝臓のせいで長くは続きません。
肝臓にはアルコール脱水素酵素という有名な酵素があります。
これは、エタノールをアセトアルデヒドに分解します。
このアセトアルデヒドが蓄積されると、協調性が失われます。
そのため、日中に飲酒すると、これらの副産物が体内に蓄積されて、記憶力が失われたり、物忘れをしたり、鎮静状態になったりするのです。
実際、日中の飲酒はスポーツでの怪我の多さに関係しているというのも当然のような気がします。
これらを考えると、夜の飲酒の方がメリットが高いような気にさせられますね。
夜にお酒を飲むデメリット
実のところ、夜の飲酒における最大のデメリットは、睡眠に悪影響を与えることかもしれません。
アルコールは興奮性の神経伝達物質であるグルタミン酸を抑制することがわかっているので、アルコールが体内から抜けると、脳が過剰にそれを補正しようとして、グルタミン酸のリバウンドが起こり、興奮したりイライラしたりするのです。
夜にお酒を飲むと、眠ろうとしているときにこの興奮の反動が起こってしまいます。
多くの人が気づいていないことですが、これによって睡眠サイクルが中断されてしまうのです。
でも、「お酒を飲むと眠れるよ」と感じている人も少なからずいるでしょう。
しかし、電気的な脳波を見ると、酔っているときの睡眠は自然な睡眠ではありません。
麻酔に似た鎮静作用に近いからです。
実際にアルコールは、夢を見るタイプの睡眠であるレム睡眠を最も強く鎮静させるものの一つです。
アルコールは睡眠に影響を与え、認知能力を低下させる
肝臓でアルコールが代謝されると、ケトンとアルデヒドが生成されます。
アルデヒドは、レム睡眠を生成するのに必要な脳波を驚異的な力で妨害します。
レム睡眠は、記憶や連想など、体や脳の多くの機能を働かせるうえで欠かせないものです。
ある研究では、大学生のグループを集めて、1週間勉強してもらいました。
そして、7日後、全員が再びテストを受けたら、結果はどうなったと思いますか。
夜間にアルコールを飲まなかった人々は、学習したことをほぼすべて覚えており、知識の抽象化と保持が強化されていることがわかりました。
1日目から寝る前にお酒を飲んだグループは、50%以上の知識を忘れていました。
そして、2日目以降に飲み始めたグループは、約40%の知識を忘れていたのです。
つまり、昼間の飲酒は、実際には体がアルコールを代謝する時間を確保できるので、良い睡眠をとれている可能性を高めるようです。
そう考えると、昼間の飲酒の方がメリットが高そうですね。
お酒の種類によって得られるメリットは違うのか
恋人とミモザを飲んだり、男友達と冷たいビールを飲んだりする方が、夜にダークウイスキーをロックで飲みながら哲学の話をするよりも気分がいいという人もいます。
さて、お酒の種類によって効果は変わるのでしょうか?
ある調査では、蒸留酒のショットを飲んだ後の方がネガティブに働き、ワインやビールを飲んだ後の方がポジティブな期待値が高いという結果が出ています。
また、別の調査では、回答者の29.8%が蒸留酒を飲むと攻撃的な気分になると報告しています。
飲んでいるお酒の種類が気分に影響するという生理学的な証拠はありませんが、お酒が自分に与える影響をどのように認識するかはなんらかの共通点が見られるようです。
飲む時の気分や状況によってアルコールの効果は異なる
本当に重要なのは、飲み始める前のあなたの気分です。
それがアルコールの影響で悪化します。
例えば、日曜日に一日中飲んでいて、月曜日に仕事をしなければならないことを極度に心配していたら、楽しいお酒の時間は過ごせないでしょう。
一方で、金曜日の夜、仕事を終えてビールを飲みながらくつろいでいたら、少しは楽しくなるでしょう。
結論:昼間にお酒を飲むメリットの方が大きい
昼間に飲む場合のポイントは、たいていの場合、食事ができるということです。
食べ物は、アルコールの吸収をゆるやかにします。
胃の中に食べ物があると、アルコールが直接血流に入るのではなく、胃での吸収が減り、表面積の大きい小腸に到達するのが物理的に遅くなります。
つまり、食事をしながら飲むと、酔いが回りにくくなるのです。
しかし、結局のところ、アルコールは生理的に不快、危険で、中毒性がある薬物であることには変わりません。
慢性的なアルコールの過剰摂取は、神経障害、心血管障害、肝臓病、癌などの原因となります。
勉強や仕事の効率を上げたい、周りの世界を認識したい、協調性を保ちたい、ぐっすり眠りたいなら、アルコールを完全に抜く必要があるでしょう。
どちらかを選ばなければならないとしたら、私は昼間に飲むのはあまり好きではありませんが、睡眠にはとても気を遣っているので、夜に飲むのは避けようかと思います。
飲まないというのが一番ですが。
そうですね。飲むのやめられるように頑張ります。