実は、ビール腹と呼ばれる太ったおなかの原因は、ビールそのものにあるわけではなく摂取カロリー量とカロリーの種類にあるようです。
つまり、ポッコリと太ったお腹は、ビールを飲む人だけのものではなく、誰にでもありえること。
今回は、ビール好きの人が特に知っておきたい「ビール腹の正体」について、その原因や内臓脂肪の本質をもとに分かりやすく紹介します。
日本では、お酒の席で「とりあえずビール」という決まり文句があるほど人気のビール。
特に夏は、気温が一度上がるごとに、大瓶(633ml)で一日100万本近く売り上げが伸びるほどに。
海の向こうのアメリカでも、平均しての人が、他のどのアルコール飲料よりもビールを好む傾向があり、なんと成人の半数近くが「ビール腹」であることも複数の研究で示されています。
ビール腹の正体とは?
私たちの体型は、リンゴ型、砂時計型、洋ナシ型、逆三角形型など、人それぞれに異なります。
それは、遺伝子的な要因やホルモンの影響などによって、脂肪が保存されやすい部位が異なるからだといわれています。
つまり、遺伝子は、太りすぎや肥満になる潜在的な可能性をもつだけでなく、脂肪を保存する場所にも影響を与えているのです。
女性の場合は主に太ももや腕、背中などが、脂肪のつきやすいスポットだといわれています。
そして、男性は、お腹に脂肪がつきやすく、その多くが内臓脂肪と呼ばれる脂肪の一種で、お腹の奥深くの臓器の周りにひっそりと蓄積していきます。
さらに男性の場合、内臓脂肪が腹壁の後ろに積み重なって、腹壁を外側に押し出す傾向があるため、それがぷっくりと突き出たビール腹を形成しているようです。
ビール腹の原因はビールとは限らない
ビール腹の問題は、ビールそのものにあるのはなく、摂取カロリーにあります。
たとえば、エールビールの場合、1缶あたりのカロリーは平均150kcalだといわれています。その値は、約150mlのグラスワインよりも30kcalから50kcal高く、ウィスキーの1ショットよりも45kcal高くなります。
基本的に、それらの摂取カロリーは、体を動かして消費しなければ、おなかに行きつきます。エネルギーとして使われなかった余り分が腸をはじめとしたお腹の臓器周辺にたまっていくのです。
カロリー数の問題だけでなく、摂取カロリーの種類も重要です。
ビールには、加工度の高い炭水化物が高レベルで含まれています。これは、インスリンの働きを妨げ、臓器周囲の脂肪蓄積を促進する可能性があることを意味します。
インスリンは、すい臓のβ細胞から出るホルモンの一つです。ビールの炭水化物に含まれる糖分によって血糖値が上がる(血液中のブドウ糖が増加)と分泌され、糖をエネルギーに変換するために働きます。
炭水化物(糖質)は、グラスワイン一杯分には1、2グラムほどしか含まれていませんが、ビール一杯分では、10グラムから20グラムにも及びます。
実のところ、摂取カロリーや糖質が、ビールからくるものか、または、おつまみや他の種のジャンクフードからくるものなのかは関係ありません。
ビール腹がなぜいけないのか
良いニュースは、あなたが適度にビールを飲むのであれば、ビール腹にはならないことです。
悪いニュースは、カロリーがどこからくるのかに関係なく、ビール腹はよくないという事実です。
内臓脂肪が、腎臓や肝臓、腸を包みこんでいくと、それらの正常な機能を破壊する可能性があるホルモンを放出し、それが2型糖尿病や心臓病、さらには癌などの問題を引き起こすことにつながるからです。
それだけではありません。
おなかの内臓脂肪を蓄えるスペースがどんどん狭くなり、最終的に使い果たしてしまうほど脂肪細胞が蓄積した場合、あなたの体は、近くの臓器の中になんとかしてスペースを作ろうとし始めるかもしれません。
そうなると、肝臓の中にまで脂肪が蓄積していき肝障害やその他の病気を引き起こす可能性があります。
また、内臓脂肪が多くなるほど、脂肪組織から分泌される「アディポネクチン」が減少するとも考えられています。
アディポネクチンは、血管壁の修復をはじめ、インスリンの働きを助けて血糖値の上昇を抑制するなど内臓脂肪の減少にも役立つホルモンだと考えれています。
ビール腹の人は健康上のリスクが高くなる
アメリカの研究チームが、第3回全国健康栄養調査をもとに行った研究では、ビール腹、または、WHR値(ウエストとヒップの比率)が標準よりも0.9%以上高い男性は、健康上へのリスクが87%も上昇することが示されています。
それは、標準体重であっても痩せ型であっても関係なく、内臓脂肪はあなたの人生を脅かすことができることを意味します。女性の場合は、男性よりもリスクは低いようですが、それでも内臓に脂肪がついている人のリスクは高くなります。
なぜビール腹は男性によく見られるのか?予防方法は?
男性の場合、テストステロンと呼ばれる男性ホルモンが、体脂肪を減らして、体をスリムに保つのに役立ちます。
しかし、その分泌量は年齢とともに減少するので、それだけビール腹を成長させる可能性は高まります。
ぽっこりと突き出たおなかの脂肪は、健康上のリスクを考えると冗談にはなりません。
今まさに、ビール腹を成長させているお父さん(65歳以下)やパートナーがいるなら、ぜひ健康を維持するためにも1晩に6缶ではなく、1、2缶程度に抑えるように警告をしてあげてください(65歳以上は1日1缶まで)。
飲みすぎを防いで楽しめる程度の量を維持することが大切です。
ビールを飲む量が少なければ少ないほど、消費カロリーも少なくなり、腹部の脂肪が増える可能性も低くなります。
また、ビールを飲み過ぎる人は、ついつい食欲が増して食べ過ぎてしまうため、内臓脂肪が付きやすい傾向があるのは事実です。
ポイントは摂取カロリー量とカロリーの種類であることをぜひ覚えておきましょう。
消費カロリーと活動量のバランスをとることで、年齢や遺伝学にかかわらず、肥満を防ぐことができます。
参照元:Science Insider