なぜヒトは片方の鼻だけで呼吸するのか?

2021年5月 5日

風邪を引くと、しばしば片方の鼻がつまって呼吸がしにくくなります。

しかし、実際には風邪に限らず健康な人の鼻でも、左右2つの鼻の穴を数時間ごとに交代させながら呼吸しているのを知っていますか?

私たちは、気づかないうちに「さっきは右側の鼻がつまっていたのに、今度は左」というように、鼻の空気の通り具合を左右でコントロールしているのです。

それでは、なぜヒトは2つの鼻の穴で交互に呼吸をしているのでしょうか?そもそも鼻の穴が2つあるのはなぜでしょうか。

ここでは、その理由について、鼻の興味深い役割を考えながら分かりやすく紹介していきます。

ほとんどの人が片方の鼻だけで呼吸している

ヒトの鼻孔は、常に呼吸の義務を負っています。

それはあまりに当たり前すぎて、普段から意識している人は少ないでしょう。おそらく、鼻詰まりのときに改めて実感することかもしれません。

左右の鼻は、肺への出入り口です。

私たちは、肺に負担をかけずにきれいな空気を送り届けるために、鼻のコンディションを良い状態にキープしなければなりません

そこで、片方の鼻孔が「仕事モード」になるときは、もう一方を休めることで、それぞれの鼻孔が効果的に機能するようにしているのです。

この現象は、「ネーザルサイクル(鼻周期、または、交代制鼻閉)」と呼ばれ、「自律神経系」と呼ばれるシステムによって自動的に行われています

あなたがもし、いつもどちらか一方の鼻がつまったように感じているなら、それは、自律神経がうまく働いている証拠なので安心してください。

ただし、病気で鼻づまりがひどいときは、余分な粘液のせいで、休んでいる方の鼻の穴がもっと詰まっているように感じてしまうのです。

ネーザルサイクル

では、ネーザルサイクルはどのようにして起こるのでしょうか?

自律神経系は、消化や心拍数など、体が勝手に行う多くのことを制御しているシステムです。

まず、それが一方の鼻孔の血流を増加させます。

すると、片方だけ鼻の内部が腫れて一時的に鼻詰まりのような状態になり空気の流れが制限されます。数時間経過すると、これが反対側の鼻孔に切り替わるのです。

これによって生じる鼻づまりは、寝ている時、特に横向きになると感じやすいようです。

実は、呼吸にネーザルサイクルがあるのは、私たちに鼻の穴が2つあることと深く関係しています。

鼻の穴が2つある理由

鼻孔が2つあると、鼻にかかる負担が分散されて、嗅覚が鋭敏に保たれます。それだけでなく、その他の鼻の機能を効率的にする効果もあります。

それではまず、鼻の穴は、外の世界と肺をつなぐ入り口であるという事実に基づいて、それがもつ役割とあわせて考えていきましょう。

外の空気を肺に適した温度と湿度に調節する鼻の役割

肺は、外がどんなに寒くても、暖かく湿った空気を必要とするため、鼻には、外の冷たい空気が直接肺に入らないように温めて加湿する役割があります。

鼻の内部には、鼻甲介(びこうかい)と呼ばれる空気の通り道があり、加温・加湿効果を高めるためにひだ状になって内部の表面積を広くしています。

この鼻甲介は、毛細血管が密集するところで、表面が粘膜でおおわれています。

冷たい外気がこの通り道に入ってくると、血管を膨張させて温かい血液で空気を温め、粘液(鼻水)で加湿する働きがあるのです。

ところが、冷たく乾燥した空気がたくさん入ると、鼻の内部が損傷を受けてしまうことがあります。

空気の有害物質を取り除く鼻の役割

空気には、酸素だけでなく、病気の原因になるウイルスやほこり、ゴミ、花粉などが混ざっています。

鼻の内部には、繊毛と呼ばれる短くて細かい毛があり、この繊毛の動きによってこれらの有害物質を取り除き、空気を浄化しているのです。

しかし、浄化フィルターとして機能する繊毛は、ときどき休ませなければ乾燥した空気の影響を受けて死んでしまったり、粘液が奪われてしまったりします

常に汚れた空気の猛攻撃を受けると、空気中の細菌や有害な粒子のフィルタリング機能は低下してしまうのです。

ゆえに、普段からそれほど酸素を必要としないときは、一方の鼻甲介に血液を大量に送り込んで充血させ、通過する空気の量を制限することで繊毛を休ませているのです。

嗅覚の働きを効率化

ネーザルサイクルはまた、有害物質をかぎ分けたり、食べ物のにおいを楽しんだりする嗅覚の働きを助ける役割もあります。

「ニオウ」とは、空気中の浮遊化学物質の検出を意味します。

これらの浮遊物質は、鼻の奥で嗅細胞とよばれる約4000万にもおよぶ受容体と出会うと一時的に化学結合します。

すると、刺激を受けた鼻の受容体が、脳に信号を送ります。この信号を脳が受け取ることで私たちはニオイを感じることができるのです。

しかし、ニオイの化学物質のなかには、他の化学物質よりも鼻の受容体に結合しやすいものがあります。そういった物質は、受容体にくっつきやすいので、鼻の中を速く進まないと入り口で吸着されてしまい、後部の受容体にまで届かずにニオイを感じにくくなります。

対照的に、受容体にくっつきにくい化学物質の場合は、ゆっくりと移動しないと結合できずに検出されないまま通り過ぎてしまう可能性があります。

そのため、私たちの鼻は性質の異なるさまざまな化学物質に対応するために、一方の鼻の空気の流れを制限し、もう一方の通り道を拡張させて、それぞれの空気の流れを調節することで、より広い範囲のニオイを検出できるようにしているのです。

最後に

いかがでしたか?

鼻がつまったように感じるのは、風邪や花粉症、アレルギーだけが原因ではなく、正常な感覚のひとつでもあったようです。

私たちには鼻の穴が二つあります。

当たり前のようですがそれにはちゃんとした理由があり、片方ずつの腫脹と収縮を繰り返すことで通過する空気の量を調節し、ときには鼻を休ませたり、呼吸に必要なエネルギーを節約したりできることが分かったと思います。

風邪で鼻の通りが悪いときには不便に感じるかもしれませんが、このネーザルサイクルがあるおかげで、肺は正常な状態に保たれ、さらには、鋭敏に保たれた嗅覚でチョコレートのような複雑な香りを味わうこともできるのです。

これからは働き者の鼻に感謝し、少しくらいの鼻詰まりは我慢して、片方ずつ休ませてあげるようにしましょう。