外来種「ムクドリ」の何が問題なのか?

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侵略的な外来種(がいらいしゅ)の何が問題なのか?実際に侵入した地で引き起こされた問題や影響について紹介します。

世界中で数多くの在来種が、外来種によって食べ物や住処を失い、種の保存が難しくなっています。

たとえば、アメリカのムクドリ。アメリカには、何百万羽ものムクドリがいて、時には、大きな群れで飛んでいます。

驚いたことに、かつてこの地にこの鳥は一羽もいなかったといいます。

しかし、今では、以下のようにムクドリの大群によるフンや農作物への被害が大きな問題となるほどに増え、もともとこの地で生活していた鳥たちは、食べ物や住処を奪われて数を減らしていきました。

外来種とは

ムクドリは外来種と呼ばれるものの一例です。

外来種とは、動物や植物、その他の生物の一種で、ある場所に移動して、もともとそこにいた他の種類の生物(在来種:ざいらいしゅ)に何らかの害を及ぼしたり、生態系を崩したりする種をいいます。

種とは、特定の種類の生き物のことで、多くの種が特定の生存環境でしか生きられません。

たとえば、湿った熱帯雨林に住むクモザルは、乾燥した砂漠では生きられないでしょう。

生きていくために必要な食料、水、シェルターを見つけることができないからです。

しかし、外来種は元々生息していた場所以外でも生存することができます。

そして、外来種が侵入すると、柔軟性に欠ける他の種の生物に問題を引き起こすことがあるのです。

北アメリカのムクドリがそうでした。

ムクドリが在来種のエサや住処を奪ってしまう

外来種が生態系に与える影響がまだ知られていなかった1890年、アメリカのアマチュア鳥類学者ユージン・シーフェリン氏は、イギリスから輸入したムクドリをニューヨークのセントラルパークに放ちました。

しかし、ムクドリはくちばしの力が強く、エサをとるのがとても上手なので、アメリカにすでにいた他の鳥より多くのエサを一年中とることができます。

その結果、すでにアメリカにいた鳥たちのエサは不足していきました。

それだけではありません。

他の鳥たちが食べ物を求めて冬に別の場所に移動すると、ムクドリはその鳥たちが作った巣にすみついたのです。

暖かくなって戻ってきた鳥たちの家はもはやありませんでした。

ムクドリは他の鳥たちの食べ物や家を奪ってしまったのです。

そして、ムクドリは子供を産み、その子供もまた子供を産み、どんどん数を増やしていき、ついには大量発生して、元々すんでいた鳥の種類はずいぶん減ってしまいました。

外来種が在来種を捕食する

これはすべて、たった一人の人間がムクドリをアメリカに持ち込んだために起こったことです。

また、ある場所から別の場所へ偶然にも外来種が移動することもあります。

例えば、ミナミオオガシラというヘビは、オーストラリアからグアムという近くの島へ偶然に移動しました。

科学者たちは、このヘビが船か、あるいは飛行機の中に隠れていたのではないかと考えています。

グアムには、鳥やトカゲなど、ヘビの食べるエサがたくさんありますが、ヘビを食べてくれる動物はあまりいません。

そのため、ヒガシオオガシラヘビが増えるほど、エサとなった鳥や動物の数は減っていきました。

ヘビが来る前にグアムに生育していた鳥のなかには、捕食されて絶滅した種もいます。

では、外来種を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか?

外来種を防ぐためにできること

それは簡単な問題ではありません。

なかには、ただ注意を払うだけで防げる場合もあります。

たとえば、船や飛行機でツチヘビが運ばれてこないように、臭いで荷物や人を検査をする犬も活用されています。

一般的に、野生の動物や植物は、ある地域から持ち出して別の地域に運ばれないように、細心の注意が払われています。

北米のムクドリは、おそらくこれからもずっといなくなることはないかもしれませんが、彼らの話から学んだことを活かして、他の生き物が外来種になるのを食い止めることはできるはずです。

参照元:Invading Birds!