魚なのに陸を歩く「ムツゴロウ」のユニークな生態

動物・植物・生き物

ムツゴロウは、人生のほとんどを海の外で過ごすという不思議な魚。

なんと陸上を歩いて、空気を吸うことができる水陸両生魚です。

その人生は、他のほとんどの魚とは大きく異なります。

以下に、ムツゴロウの愉快な求愛ダンスや泥の上を歩く様子などをBBC EARTHによる映像で紹介します。

ムツゴロウのユニークな生態

Mudskippers: The Fish That Walk on Land | Life | BBC Earth

そもそもムツゴロウは、水の外にいる魚として、どのように生き残ってきたのでしょうか?

その答えは泥の中にあります。

ムツゴロウが生育できるのは、「シルト」と呼ばれる粘土より大きく、砂より小さな粒子が堆積した土地だけです。

日本では有明海近郊のみで、火山灰からなる滑らかで細かなシルトの泥には、たくさんの酸素が含まれています。

潮が引いて干潟が露出すると、太陽の光が豊かなシルトに当たり、小さな植物や動物が繁栄します。

そして、そこにはムツゴロウのエサがすべてあります。

胸びれを器用に使って、泥の上を這ったり、飛び跳ねたりして移動しながら、エサとなるケイ藻類(そうるい)や藻類を探します。

ジャンプしてメスに求愛ダンス

しかし、陸上での生活には問題がないわけではありません。

特に配偶者を見つけるのは大変な作業です。

そこでムツゴロウが考え出したのが求愛ダンス。

背びれを大きく広げて、泥の上を高くジャンプすることで、メスに気づかれやすくしているのです。

そして、ときには頭上高くにある視野の広い目で、味方と敵の両方に目を光らせて、縄張りへの侵入者と戦うこともあります。

背びれを開いて、口を大きく開けて相手を威嚇し、得意のジャンプで噛みつくいように体当たりして縄張りから敵を追い払うのです。

ムツゴロウは皮膚呼吸ができる

ムツゴロウが気をつけなければなならないのは、太陽の熱で体が渇いてしまうこと。

ムツゴロウは、エラ(水中)皮膚(陸)の両方で呼吸を行います。

皮膚は非常に薄く、空気中の酸素が溶けこんだ水がなければ呼吸できなくなってしまうので、体を常に乾燥から防ぐ必要があるのです。

そのため、歩きながらときどき止まり、泥の中を転がることで、皮膚を水で湿らせています。

そうはいっても干潟では、泥の中にトンネルを掘って地下に隠れるのが一番安全でしょう。

ムツゴロウの巣穴

ムツゴロウは、泥を口に含んでは運び、外に吐き出す作業を繰り返してトンネルを掘り進めます。

なんと、体長15cmほどしかな体で、1メートル近くも深い巣穴を掘ることができるといわれています。

もしものときのために、通常出口は2つ。

潮が満ちると、この快適な巣穴に入り込み、干潟の潮が引いている数時間の間だけ穴から出てエサを探して活動しているのです。

巣穴の周囲にある無数の泥の塊は、まさにムツゴロウの努力の結晶だったのですね。

しかし、一日に2度訪れる潮の満ち引きで、海水が入れ替わる度にこのトンネルのメンテナンスをしなければならないのは、本当に労力のかかることでしょう。

このようにして、ムツゴロウは、産卵も寒い冬も人生のほとんどをこの巣穴で過ごします。