テントウムシは「真の昆虫」ではない?

動物・植物・生き物

私たちは、小さくて不気味な生き物を作るたびに、それを虫と呼びます。

しかし、虫のように感じる生き物の多くは、正確には昆虫とは違います。

さらにややこしいのは、たとえ名前に「虫」と付いているからといって、「真の昆虫」であるとは限らないというケースです。

では、そもそも昆虫とは何を意味するものなのでしょうか?以下にみていきましょう。

昆虫とは

昆虫学者(昆虫を研究する人)にとって、虫には、いくつかのサブグループがあります。

本来の「真の昆虫」とされていたのは、虫と呼ばれる生き物の8%にあたる半翅目(はんしもく、日本ではカメムシ目として知られる)でした。

ストロー状の口で餌を刺し、液体を注入して栄養価の高い体液に溶かし、おいしい餌をすすり出すことで他の昆虫と見分けることができます。

トコジラミやカメムシ、あるいは英語名でassassin bug(暗殺虫)という恐ろしい名前で呼ばれるサシガメなど、皆さんもよくご存知の種類がいくつかあるでしょう。

しかし、ややこしくなるのは、一般的な名前に「虫」と付いているからといって、科学的な意味での真の昆虫であるとは限らないというケースです。

例えば、テントウムシは鞘翅目(しょうしもく)というまったく別の昆虫の仲間であり、ダンゴムシは昆虫ですらありません。

ダンゴムシは、同じ長さの脚がたくさんある「脚等脚(ワラジムシ)目」の分類群でエビやカニと同じ甲殻類のグループに含まれます。

では、この混乱はどこから来たのでしょうか?

昆虫の語源「気味の悪いもの」

それについては、昆虫学の語源を調べてみましょう。

1400年代には、英語では既に昆虫という言葉が使われており、それはおそらくウェールズ語の「bwg」が語源だろうと考えられています。

「bwg」は、幽霊のような神秘的で不気味なものを指す言葉でした。

後にシェイクスピア作の悲劇「ハムレット」にも登場するこの言葉は、その用法の良い例です。

この「bwg」は 「boogeyman(ブギーマン、悪い子をさらっていく子取り鬼)」の語源にもなっています。

しかし、「bwg」が昆虫を表す言葉として初めて登場したのは1594年のことです。それは、医学の教科書に、おできから這い出てくる不気味な黒い生き物のについて書かれたものでした。

これは、気持ち悪いし、ちょっと怖いので、「bugge(バグジー)」と呼ばれました。

1600年代初頭には、ある種の昆虫が頻繁に登場し、それは現在私たちがトコジラミと呼んでいるもので、人々はこの夜行性の厄介者を指すのに「bugge」という言葉を使いました。

1700年代、生物学者のカール・フォン・リンネ(Carl Linnaeus)が昆虫をハエ、甲虫、アリなどのグループに分類していたとき、彼はそれ以外のトコジラミやそれに類するもの、つまりストローのような口をもち、体液を吸う種の半翅目を「昆虫」というグループにまとめて放り込んだのです。

しかし、リンネやその後に登場した科学者たちが、科学界における「昆虫」という言葉の意味を昆虫の特定の目だけに絞ったにもかかわらず、一般の誰もが元の「不気味なもの」を意味する言葉として広く使い続けました。

そして、「虫」という言葉を、機械の不具合や病気、気味の悪いな生き物などを指す他のあらゆる言葉に適用していったのです。

結局のところ、「虫」という言葉は、たとえ本来の気味が悪い意味であろうがなかろうが、昆虫のイメージをより明確に伝えるのに役立つようです。

虫と昆虫は違う

ご存知の通り、昆虫とは、生物分類上、動物界において体が頭部、胸部、腹部の3つの部分に分かれ、6本脚の外骨格をまとい、一生のうちに少なくとも1対の羽を持つ節足動物門昆虫綱

スミソニアン博物館によると、昆虫は世界で最も多様な動物群であり、現在知られている全種の約80%を占めます。

現在確認されているのは約90万種ですが、科学者たちは、まだ発見されていない昆虫は200万から3000万種以上存在する可能性があるといいます。

そして、世界中で知られている昆虫のうち、真の昆虫は約8万種だといわれています。

対して「虫」には昆虫のような明確な定義はなく、昆虫をはじめ、クモやダニ、ムカデ、寄生虫、ミミズやヘビ、ダンゴムシやカタツムリまでも虫と呼ばれています。

参照元:
This Is Not A Bug
Numbers of Insects (Species and Individuals)