身近なふしぎ

卵はどちらの色の黄身がおいしいのか?

身近なふしぎ

さて、この2つの卵のうち、あなたはどちらの黄身の色を選びますか?

おそらく「栄養価が高そう」だし「おいしそう」に見えるなどの理由から黄身が濃い方を選ぶでしょう。

それは正解でもあり、不正解でもあります。

実は、身近な食べ物の多くは、「味を良く見せる」ために色補正されることがよくあるようです。

それは残念ですが、同時に、色が私たちの味覚にそれほど大きな力を持つという事実に驚かされます。

以下に、私たちが感じる味覚は、味だけではないことについて、卵や鮭を例に紹介します。

色がなければ味の違いは感じにくい


研究者が卵を黄身の色で2皿に分け、どちらがおいしいか食べてもらう実験を行いました。

すると、調理法には関係なく、目隠しをした被験者は黄身の濃さにおいしさの違いを見いだせませんでした。

また、もともとの卵の色が分からないように、卵を緑色に着色した場合も同様に、黄身が薄い卵の方が、黄身が濃い卵と同じくらい美味しいと答える人がいました。

つまり、色がなければ、人は一般的に黄身の色の違う卵の違いを味わえないということです。

味覚を決める手がかりは味だけではない

色が私たちを騙して、本来味わえない違いを味わわせているなんて信じられませんが、実際に物事の味覚は、味だけではないことが分かっています。

何十万年もの間、私たちは様々な手がかりを使って、何かを食べるべきかどうかを決めてきました。

そして、それは今でもそうです。

バナナを黄色いで選んだり、アボカドをって熟したものを選んだり、残り物の匂いを嗅いでまだ新鮮かどうか確かめたり、誰かがポテトチップスをカリカリと噛んでいるを聞いてどうしてもそれを食べたくなったりした経験はありませんか?

こうした手がかりは、実際に口に入れる前から、その味を想像させるものです。

そして、ほとんどの場合、こうした想像は的中します。

しかし、時には、手がかりが味と実際には関係ないこともあります。そして、卵の場合もまさにそのようです。

黄身の色では味は分からない

卵黄の色は、主にカロテノイドから得られます。カロテノイドは多くの野菜や果物が作り出す色素の一種です。

一方で、動物はカロテノイドを自ら作れないため、植物や微生物が生成したカロテノイドを摂取して取り入れています。

たとえば、鶏がカロテノイドを豊富に含む食べ物を多く食べれば食べるほど、黄身の色が濃くなるのです。

しかし、カロテノイドは味覚では判断できないので、カロテノイドを多く含む黄身の卵と、少ない黄身の卵の味は実際には変わりません。

脳は色で味を予想する

一方で、私たちの脳は、色に基づいて、それらの卵の味を予想します。

この仕組みは科学的に複雑ですが、少なくとも卵の場合、私たちの感覚系は予測の方に大きく傾きやすいため、黄身の濃い卵が実際には味が良くないとしても、おいしく感じやすいのです。

とはいえ、もしかしたら、カロテノイドを多く食べる鶏は、全体的に食生活が多様であったり、新鮮な地元産であったりすることが多く、それが卵の味を良くしていることもあります。

実際にこれは卵の味覚の予想に大きく影響していているようですが、少なくとも目隠しをしてでもわかるほどの味の違いはないようです。

そして、もう1つの重要なことがあります。

生産者は卵の黄身の色を調整できる

黄身の色が濃い卵は、必ずしも餌の質が良い鶏や地元産の鶏から採れた卵ではないということです。

なぜなら、基本的な鶏の飼料に、赤ピーマンやチリフレーク、マリーゴールドの花びら、オレンジの皮、合成色素など卵によく合うカロテノイドを補充するだけで、大規模な商業生産者であっても、誰もが鶏にほぼあらゆる色合いの黄身の卵を産ませることができるからです。

卵の色見本

ここに、卵専用の色のガイドがあります。

研究によると、一般的に図の12番以上の黄身の色が好まれるようですが、世界の国や地域によって好まれる黄身の色合いには興味深いばらつきがあります。

たとえば、南ヨーロッパでは14の色が好まれ、日本では極端に濃い16の色が好まれる傾向があるようです。

実はこれは卵黄に限った話ではありません。

鮭の色見本

鮭の色も基本的に同じです。カロテノイドを多く摂取すればするほど、鮭の身は赤みがかります。

実際、養殖サーモンはカロテノイドを含む食物を自然に摂取できないため、飼料に色素を与えなければ、身は薄い灰色になります。

そして、サーモンにも卵と全く同じような色見本があります。

消費者は色が薄いと味が悪くなると信じる傾向があるため、図の23未満の色のサーモンはどんな値段でも売れないようです。

さて、みなさんは色が私たちの味覚にそれほど大きな力を持つという事実に驚きませんか?

人はまず目で味わう

卵や鮭以外にも、色が食べ物の味覚に与える影響が分かる例は、身の周りにたくさんあります。

イチゴのような赤い食品着色料を加えると、ヨーグルトが甘く感じるように脳がだまされてしまうこともありますし、青く着色された肉を食べると、本当に体調が悪くなることもあるようです。

「人はまず目で味わう」という古くからの格言はまさに理にかなっています。

他の感覚についてもそうです。

食べ物は、聞いている音、一緒に食べる人、またはどんな気分かによっても味が変わることがあります。

結局のところ、味覚はとても複雑で、そのニュアンスを解釈することは一筋縄ではいかないようです。

卵の黄身の色が味覚に与える影響については以下の動画で見ることができます。

Egg color is engineered