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なぜ空の色は変わるのか?紫ではなく青いのはなぜ?

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みなさん、空の色が青やオレンジ色に変わるのはなぜかご存じでしょうか?

それはレイリー散乱と呼ばれる現象のためです。

レイリー散乱とは、光の波長よりもはるかに小さい粒子(例えば空気中の窒素や酸素分子、他のエアロゾルなど)によって光が散乱されること。

さらに、この光の散乱は、波長の短い色(赤よりも青や紫)の方が強く(散乱されやすい)なります。それは、波長の短い光の方が、ぶつかる粒子をより大きく感じられるからです。

結果、あちこちに散乱された青い光が空に広がることで、空が青く見えるようになります。

では、なぜ空は、青よりも波長が短い紫色には見えないのでしょうか?

これについて、以下に、例をもとにわかりやすくみていきましょう。

おまけ:火星では日中赤っぽく、「夕焼けが青い理由」についても触れているのでぜひ最後までご覧ください。

レイリー散乱とは

公園で走り回っている子供たちのグループがあるとします。

小さい子はより不規則に、活発に動き、大きい子はよりゆっくりと動いていることに気づくかもしれません。

この遊び場の様子は、さまざまなガスとさまざまなサイズの粒子で構成される大気に似ています。

そして、可視光線(私たちが見ることができる範囲の電磁波)は虹のすべての色を包む電磁波(のなかでも特にエネルギーが高い電磁放射線)の一種です。

それぞれの色は異なる波長と関連付けられており、紫は最も短い波長を持ち、赤は最も長い波長を持ちます。

電磁波は、空気中の粒子の大きさに応じて、波長の長さによってぶつかる粒子のサイズが異なります。赤など長い波長の場合、そのまま素通りするような小さな粒子でも、波長の短い紫や青はぶつかり(散乱)やすくなります。

つまり、紫や青などの波長が短い光は、これらの色の波長よりもはるかに小さい大気中の粒子によって散乱されやすくなります。

一方、オレンジや赤などの長い波長ほど散乱しにくくなります。

この現象は散乱によって説明され、ノーベル物理学賞を受賞した20世紀の著名なイギリスの物理学者、および、数学者であるレイリー卿(Lord Rayleigh)にちなんで名付けられました。

このため、光が地球の大気圏に入り、はるかに小さな粒子に出会うと、赤よりも紫と青の方が効率的に散乱されます。

空いっぱいに散乱されたたくさんの青い光が目に届くことで、空に美しい青色を与えているのです。

しかし、これは興味深い疑問を思い浮かばせます。

紫の波長が青よりも短い場合、紫は青よりも散乱されるはずではないでしょうか?

それなら空は紫色に見えるのではないでしょうか?

なぜ空は紫ではなく青いのか

それは理にかなっています。

確かに、空では青よりも紫の方が散らばっています。

しかし、いくつかの理由により、私たちは空を紫色には見ません。

人間の目の構造が原因

まず、色を感知する私たちの目の錐体は、紫色の波長よりも青色の波長に敏感です。

第二に、紫は青よりも先にはるか遠くで散乱されて飛んでいってしまうために地表に届きにくいうえ、大気中に吸収されやすいため、空の色は青が支配的になります。

地球のはるか上空では、紫色の光の散乱を見ることができます。

そして、このレイリー散乱は、日没時に空が、青ではなく赤や黄色に見える理由も説明できます。

日没時に空が青く見えない理由

太陽が地平線に近いとき、低い角度から光が差し込むため、光が大気を通過する距離が長くなります。

また、太陽光はより密度の高い大気層を通過する必要があります(地上の方が上空よりも重力の影響を受けやすいため、大気が圧縮されて密度が高くなるから)。

つまり、これは光が大気のより多くの部分を通過する必要があることを意味します。

その結果、紫や青などの波長の短い色はさらに散乱して飛び散ってしまい、無くなった青の代わりに黄色やオレンジ、赤などの散乱の影響をうけにくい波長の長い色が目に届くようになります。

これにより、日の出と日の入りのときに、空にこれらの色の美しい組み合わせが印象的な模様として現れるのです。

太陽系の惑星の色と光の散乱の関係

レイリー散乱は、太陽系の他の惑星の空の色をも説明します。

地球の大気は主に、粒子の小さな窒素分子(約78%)と酸素分子(約21%)で構成されています。

火星の空は昼間に赤く、夕焼けが青い理由

一方で、火星の大気の量は地球よりはるかに少なく、さらに、大気中には、大量の粒子の大きな塵が舞い上がっています。

火星に差し込んだ太陽光が影響を受けるのは、大気の粒よりも粒の大きな塵(赤茶色)となるため、レイリー散乱とは異なりミー散乱(粒子の大きさが光の波長と同じかそれ以上の場合に起こる散乱)が起こりやすくなります。

ミー散乱は、塵の赤い光を前方に強く散乱させ、火星の空を赤色見せます。

逆に低い角度から入る夕陽においては、大気中の赤い塵(大きな粒)に散乱されにくい青色の光が目に届きやすくなることで夕焼けが青色に見えるのです。

このため、火星の空は日中は塵の赤っぽい色に見え、日の出と日の入りの時には青に変わるのです。

研究者は、地球や宇宙の他の天体の大気の研究にもレイリー散乱の原理を利用しています。

さらにレイリー散乱は、科学者が気候変動や気象パターンの研究をはじめ、他の惑星での生命体の兆候を発見するのにも役立つ可能性もあります。

次に空を見上げてなぜ青いのかと疑問に思ったときは、散乱が起こっているのを目撃していることを思い出してください。

レイリー散乱については、以下の動画で見ることができます。

Why the Sky Turns Red at Sunset (and Blue in the Day!)