地球上で真の顎を持つ動物は私たち人間だけです。
顎とは、顔の下部に突き出た骨の塊の部分で、人間と遺伝的に最も近い親戚であるチンパンジーやゴリラでさえ顎はありません。
実は、ネアンデルタール人をはじめ、私たちの絶滅した親戚ホモ・エレクトスなど古代の原人にも顎はないのです。
ヒト科全体を見渡してみても、人間特有であると言える特徴は、「2本足で歩く」以上に顎の存在は不思議なものです。
研究者たちは、人間にだけ顎がある理由について長年にわたって、下記のようなさまざまな理論を考えてきましたが、顎の存在は依然として謎のままなのです。
人間に顎がある理由についての仮説
まず最初に、顎は、食べ物を噛むときにかかっている負担(ストレス)や、話すときの舌の働きを助けるために存在すると考えられていました。
しかし、咀嚼の圧をやわらげている補強骨として機能であれば、場所的に間違っているので、この説は2016年の論文で否定されました。
次に、顎は、クジャクの尾と同じように、異性へのアプローチのために存在する説がありますが、これも、一方の性別にのみ発現するのではない点で可能性が低いと考えられています。
そして、顎は基本的に進化の名残説。
私たちの先祖は大きな顔を持っていましたが、姿勢が変化して顔が短くなったために進化の過程で顎が長く目立つようになったというもの。
実際に、ネアンデルタール人をはじめ、私たちの絶滅した親戚ホモ・エレクトスなど古代の原人には顎がなかったことなどからこの可能性はありそうです。
下顎は前方に突き出すのではなく、前歯から後ろに下がっているのも不思議です。
どうやら顎は、進化の副産物であり、意図しない形質で何の機能もない可能性があるというのが最も有力な説のようです。
2024年現在では、誰も顎がある理由について解き明かせていませんが、人間の顔がなぜ小さくなったのかから、顎の起源への解明が進む可能性がありそうです。