尖った小さな耳とボタンのような鼻が愛らしいキツネ。ふわふわの毛皮はついなでたくなります。
1950年代、ロシアの遺伝学者ドミトリー・カベ・エリアフ(Dmitry K. Balyaev)と彼の同僚は、これらの動物がどのように家畜化されるかを研究するために実際にキツネを飼いならそうとしました。
彼らは、人間の接触にあまり攻撃性を示さない銀ぎつねを選び、50年間にわたって飼い慣らされた行動をするキツネだけを繁殖させたのです。
これにより、史上初のペットのキツネが誕生しました。
しかし、この数十年にわたる実験以前には、人類の歴史においてペットのキツネの記録はありません。
私たちはオオカミを家畜化し、人間の親友を生み出しましたが、なぜ人間はキツネを家畜化しなかったのでしょうか。
以下にみていきましょう。
キツネもオオカミも同じ「イヌ科」
犬の祖先であるオオカミもキツネも「イヌ科」という共通点があると考えると、人間がキツネを家畜化してこなかったのは奇妙だと思いませんか?
現代のペットの犬は、人間が何千年にもわたって行った選択的繁殖の結果です。
これは、望ましい特徴を持つ特定の動物だけが繁殖を許可される慣行です。
人間が野生のオオカミをどうやって飼い慣らしたかは正確には分かっていませんが、石器時代の人間が、何万年にも及ぶ品種改良を経て、人間に対してより友好的なオオカミを選んだのではないかという説があります。
なぜキツネは飼い慣らせないのか
キツネが飼いならされなかった理由の1つは、臆病で無秩序であるなど単に野生的すぎたからだと考えられます。
実際に、英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)も、キツネは野生的動物であるため、ペットとして飼うことは難しいと述べています。
キツネはしばしば野生的で乱暴な行動に走りやすいため、それが人間の仲間として成功しなかった理由かもしれません。
また、基本的には単独行動で、イヌ科の中では珍しく群れを作りません。
一方、オオカミは頻繁に群れで狩りをします。
社会構造の存在により、オオカミは人間に対してよりオープンになり、狩猟採集民にとってより良い仲間になったのかもしれません。
ペット化されたキツネの存在
そうとはいえ、ロシアのキツネ農場の実験は、キツネを飼い慣らすことが可能であることを示しました。
彼らに飼い慣らされたキツネは、世代ごとに見た目も行動も犬に似てたことも確認されています。
ときには可愛く尻尾を振るようになり、人間の感情に反応したり芸を覚えたりするなど、犬のような能力も発達させたのです。
しかし、このプロセスは困難なものでした。
初期の人類がキツネを飼い慣らそうとしたという証拠もありますが、これはうまくいかなかったようです。
キツネを本質的に飼い慣らしにくいものにしている要因
オオカミや野生の猫はキツネよりも飼い慣らしやすかったため、初期の人類は単に諦め、猫や犬が初期の人類の仲間として簡単に介入するようになったのかもしれません。
一方で、都市の近くに住み、人間と定期的に接触するキツネは、より交流にオープンであることが知られています。
彼らは人間から直接食べ物をもらい、人間の存在を恐れません。
しかし、このオープンさは必ずしも飼い慣らされていることを意味するわけではありません。
これらすべての証拠から、科学者たちは現在、キツネを本質的に飼い慣らしにくいものにしている遺伝子を調べています。
キツネの飼い慣らしに関する研究は、忠誠心、従順さ、知性などの特性が私たち自身の脳や遺伝子にどのようにコード化されているかを理解するのにも役立つ可能性があるようです。
石器時代の人類が他の動物をどのように飼い慣らしたかを明らかにし、その進化に関するさらなる洞察を提供する可能性もあります。
古代のライフスタイル、約70年前に始まったキツネの調教実験は多くの課題に直面してきました。
この研究は、私たちの周りの動物と私たちが共有するはるかに長い歴史についてより深い理解をもたらしたことは否定できません。
キツネをペット化することはできるかについては以下の動画で見ることができます。