つなわたりや平均台でバランスを保つ秘訣

2017年5月 2日

平均台はまだしも、「つなわたり」と聞くと、曲芸的なイメージが強いかもしれませんが、実は上手に渡るにはあるとても重要な秘訣があります。

それは、重心です。

つなわたりのように、重力に逆らって(落ちないように)、うまく体を支えてバランスをとるためには、重心の位置と、静止した状態を保つための工夫が重要なポイントとなります。

ここでは、爪楊枝を利用して、スプーンとフォークを、グラスから落とさないようにのせる実験をもとに、つなわたりや平均台での重心のとり方やバランスを保つためのポイントについて科学的に検証されたものを分かりやすく紹介します。

これは、高校で習う力学の知識を応用したものですが、日常的な動作やあらゆるスポーツの動きでバランスをとるときに、私たちが無意識的に行っている身体の使い方と切っても切り離せなような深いつながりがあります。

重心とは

重心とは、左右、前後、上下、それぞれの向きにかかる重さ(重力)の中心で、その一点で全体の重さのバランスがとれるポイントです。

スプーンとフォークを使った重心の実験

  • まず、スプーンとフォークの先を重ねて繋げます。このとき、フォークの先が4本なら真ん中の2本に、3本なら真ん中の1本にスプーンの先をさし込むように重ねて固定します。
  • フォークの一番端の隙間に、爪楊枝の中心をさし込み、フォークとスプーン、爪楊枝の重なったポイントをグラスの口縁にのせます。
  • ここからがおもしろいところです。グラスにのせた状態のまま爪楊枝の両端にライターで火をつけます。

実験結果から分かること

不思議なことに、焼け残った爪楊枝の中心部分のみで、フォークとスプーンが支えられ、空中に浮いています。

これは、全ての重心が、グラスに爪楊枝をのせた部分の真下にあるためです。重心とは、ものが落下したり、倒れたりしないように、バランスを保つことができるポイントです。

この実験では、重心の位置以外に、もう1つ、倒れないためにある原理が働いていることが分かりました。

近くから見てみると、爪楊枝が、やじろべえのようにフォークとスプーンの柄の部分を利用してバランスを取っているのが分かります。(重心がずれない限り、フォークやスプーンが多少動いても、落ちることはありません。)

これはまさに、綱渡りをする人が、腕を左右に広げてバランスを取るのと同じ原理です。それでは、この原理について、下記で詳しく紹介します。

人がバランスをとるために行う動作

私たちは、バランスをとる時に、無意識に腕を使っていますが、この動きには意味があります。

腕を左右に広げるのは、慣性モーメントを大きくする工夫のひとつで、重心を下に落としてバランスをとりやすくする効果があります。

慣性モーメントとは、物体が、加わった力に抵抗して、回転しないように(角度を維持しようと)する力で、「回転のしにくさ」を表す値です。慣性モーメントの値が大きい程、物体は回転しにくくなります。つまり、倒れたり、落下したりしにくくなる、または、落下速度が遅くなる値です。

爪楊枝の実験では、(人がバランスを取るときの腕のように)、スプーンとフォークが回転しにくく(慣性モーメントを大きく)するおかげで落ちずに中心で止まっています。

つなわたりでの重心の位置と腕の役割

つなわたりの場合、人間の腕やバランスポールが、重心を低く保ち、落下しにくく(慣性モーメントを大きく)する役割をします。

なぜなら、重力は、腕やポールに対して下向きに働くため、つなわたりをする人が重心を低く保ちやすくなります。

さらに、腕を広げることで、体重を横方向に分散できるので、(それが慣性モーメントを大きくし)バランスを取りやすくするだけでなく、落下するときのスピードを遅くする役割もあります。

よって、腕を広げることは、あなたが転倒する前に、落ちないようにバランスを調整する時間的な余裕を作り出す効果があります。