私たち人間は、ある程度まで身長が伸びると、成長が止まってしまいます。
しかし、もし本当に成長が止まらずに、身長が伸び続けた場合、どうなってしまうのでしょうか?
実のところ、歴史上、信じられない程背の高い人物は存在しています。医学的な記録のなかで、最も身長の高い人間としてギネスブックに登録された人物、ロバート・ワドロー氏です。
彼は、死ぬまで身長が伸び続け、最終的に272cmにまで達しました。
彼の身長が伸び続けたのには理由があり、研究がすすむにつれて、カギとなるX染色体などの遺伝子を操作する方法が見つかれば身長をコントロールすることができる可能性も注目されています。
ここでは、人の背が高くなる要因や身長が伸び続けた場合に何が起こるのかについて科学的に分かってきたことを紹介します。
人間の背が高くなる理由
年々、世界の国々では平均身長が塗り替えられていますが、その背景には、経済状況がよくなるにつれて、医療体制が整い、安定した栄養が摂取できるようになったことが大きな要因となっています。
果たして、世界の平均身長はこのままどんどん高くなっていくのでしょうか?
残念ながらそういうわけではなく、背が高くなりすぎるとそれだけ膝や心臓など体への負担も大きくなるため、人間は、ある特定の身長まで伸びると、成長をとめる傾向があります。
ミュンヘン大学の経済史名誉教授であるジョン・コムロス氏によると、
「世界一高身長のオランダなどは、最適な条件下における、人間の遺伝子がもつ可能性の限界まで平均身長が達した」
といいます。
たしかに、過去には、ロバート・ワドロー氏のように、あと一年生きていれば、生態的な限界値といわれる274cmを越えたかもしれないといわれた人物もいますが、それは「巨人症」や「先端巨大症」と呼ばれる非常に稀で生体的に深刻な状態なのです。
巨人症とは
「巨人」といわれると大きな大人をイメージするのが一般的かもしれませんが、実際にその症状は、はるかに早い段階で始まっていきます。
「巨人症」は、小児期に、脳下垂体腫瘍によって体内で成長ホルモンが過剰に分泌されることによって引き起こされます。成長期後に発症した場合は「先端巨大症」と呼ばれます。
それについては、数年前、アメリカ国立衛生研究所によって「巨人症とX染色体の領域との間に関係がある」という大変興味深いことが発見されています。
研究者らは、43人の巨人症の患者のデータから、X染色体の一部が重複していることを発見したのです。
もしそうであれば、遺伝子を操作する方法を見つけることは、私たちの潜在的な身長の制御(コントロール)につながる可能性があることを意味します。
背が高すぎるとどうなるのか
研究者らはまた、成長ホルモンの過剰分泌によって成長し続けている「巨人症」の患者らが受ける重大な健康上の問題も懸念しています。
巨人症の患者は、高血圧や心臓病など特定の合併症を患うリスクが高い傾向にあります。
なぜなら、高い位置にある頭にまで血液を届けるために、血圧を高めて血液循環量を増大しなければならず、血管や心臓に相当な負担がかかって機能障害が生じやすくなるからです。その過程で、心臓も拡大していきます。
また、巨人症の症状として、さまざまな組織が肥大化するため、視覚を伝える神経が圧迫されて視覚障害を引き起こしたり、関節炎や思春期の発症の遅れを伴ったりすることもあります。
実のところ、巨人症にかかわらず、背が高い人は、癌のリスクにさらされる可能性が高くなることも分かっています。
550万人を対象に行ったスウェーデンの最近の調査によって、身長が10cm高くなるごとに、女性で18%、男性で11%の割合で、癌を発症する危険性が高まることが判明したのです。
まとめ
身長だけでなく、体重が増えることも、体に望ましくない圧力を加えてしまいます。
たとえば、450g増えただけなら少ないように感じるかもしれませんが、一日中その増加分を動かすことで、関節にはかなりのストレスをかけてしまいます。
事実、約450gの体重減少は、1.8キロ相当の膝関節への負担減少と等しいことも分かっています。つまり、1.6キロのウォーキングコースを歩くと、膝には2180キロ相当のストレスが蓄積していることになります。
これは、人々が成長を止められず、体がそれに対応できなくなった場合で、余分な身長や体重は、かなり深刻な問題につながる可能性があることを意味します。
以上のことすべてをふまえたうえで、あなたが成長を止める必要がない場合、どのくらいの身長になりたいですか?