以下のようなイヤホンの使い方をする人は、注意してください。
- 家族でイヤホンの貸し借りをよくする
- 音楽や映画鑑賞、ゲーム中などに友人と2人でイヤホンを片方ずつ使う
このように人とイヤホンを共有するとき、おそらくほとんどの人が、イヤホンに付着している細菌についてまで考えたことはないでしょう。
実は、イヤホンの共有は、いくつかの点で耳掃除をする綿棒の共有に似ています。
想像するとあまり気持ちのいいものではありませんね。
しかし、イヤホンで耳を掃除しなくとも、奥まで押し込む行為によって、耳垢がイヤホンの隙間に付着することはあります。つまり、それは同じイヤホンを共有する人と耳垢を交換している可能性を意味します。
ちょっと待って!耳垢の交換自体は悪いことなの?
実は、耳垢自体は問題ではないの。でもね、耳垢は菌が付着しやすいといった点で注意が必要なのよ。
私たちは皆、皮膚に特定の細菌を持っています。
皮膚に潜む細菌のほとんどは、正常な常在細菌ですが、問題は、感染症やかゆみ、炎症などを引き起こしてしまう細菌や真菌(カビ)、酵母などが外部からなんらかの理由で耳に入り、繁殖してしまうというリスクです。
そこで、今回は、友達や家族と、同じイヤホンを共有したり、2人でイヤホンを片方ずつ使ったりすることは問題かどうかについて、テックインサイダーによるコロンビア大学微生物学研究所の調査で分かったことを中心に分かりやすく紹介します。
記事の最後では、どうしてもイヤホンを共有しなければならないときに備えて、有効な対策も紹介しているので、ぜひ役立ててください。
イヤホンに潜む菌の調査
研究では、細菌の実態を調査するために、22組のイヤホンに付着した物質がコロンビアの微生物学研究所に持ち込まれ、そこで数日間培養されました。
まず、綿棒でイヤホンの表面をふき取り、それを寒天培地プレートにのせます。
寒天培地プレートとは、バクテリアを繁殖させたり、酵母を成長させたりするときに使用するものです。
今回は発育しにくい菌種の培養にも適したヒツジ血液寒天培地、そして、大腸菌やサルモネラ菌といった主にグラム陰性菌の生育に有効なマッコンキー寒天培地などが使われました。
この研究室で以前行われた試験では、携帯電話から糞便で見られることがある細菌が検出されています。
菌の培養結果
結果は、イヤホンに付着した菌のほとんどは、皮膚でよくみられる常在菌でした。
しかし、酵母(イースト)や土壌細菌として知られるバチルス属に陽性反応が見られるイヤホンもありました。
これについて、コロンビアの微生物学研究所のSUSAN WHITTIER博士は、次のようにいいます。
イヤホンから検出された菌の多くは、決して人と共有したいものではありません。しかし、想定していたほど悪い菌は見当たりませんでした。
私たちは皆、皮膚に特定の細菌を持っています。
イヤホンから検出された菌は、皮膚の常在菌として知られ細菌の種でした。
したがって、今回の調査では、外耳道に少し異なる微生物が存在するという理論を証拠づけるものではなく、ほとんどが正常な皮膚細菌であることが示されました。
ただし、サンプルの中には、酵母(イースト)が含まれており、それは、皮膚にかゆみや腫れなどの炎症を引き起こす可能性はあります。
イヤホンを共有するリスク
今回行われた研究では、予想したほど奇妙な菌や病原性のあるものは見つかりませんでした。
ただし、これは22組という限られたイヤホンの結果であったことは注意すべきことかもしれません。
仮に、イヤホンを使う人が、それを衛生状態がよくない公共施設や机の上に置いたり、有害な細菌や酵母が付着した鞄の中に入れたりした場合、それらがイヤホンの共有によって耳に入る可能性は否定できません。
耳鼻科医師のSUJANA CHANDRASEKHARさんは次のようにいいます。
外耳道(耳の中)は、暗い、湿った、暖かい場所です。
これは細菌や酵母にとって、素晴らしい繁殖地となります。
結果的に、それは、細菌や真菌を耳に入れると、耳管の性質によってその増殖を促すことができることを意味します。
どうやら、自分が本来もっている常在菌とは違う細菌や真菌(カビ)が耳に入り、外耳道の環境によってそれらが繁殖する可能性はゼロではなく、それが有害な菌であれば感染症につながるリスクは否定できないようです。
結論:イヤホンは共有してもいいのか?
基本的には、イヤホンの貸し借りはおすすめできません。
自分で管理するとき、不潔な場所に置かないように注意し、定期的に除菌し、衛生的なケースで保管してください。
仮に人とイヤホンを共有せざるを得ない場面があるなら、除菌スプレーに湿らせた綿棒や除菌シートで拭いてから使用するといった対策をしましょう。
いつも除菌シートを携帯しておくと、航空機の機内で共有ヘッドホンを使用したり、図書館といった公共の施設のイヤホンを使用したりするときにも便利です。
耳の感染症や、真菌(カビ)の繁殖、皮膚の炎症を防ぐためにも、できるだけ共有はひかえ、出来ることから対策をしていきましょう。