死んだクジラには近づいてはいけません。
これは本当で、過去には、座礁したクジラが火山のように爆発した例も実際に起こっています。
爆発といっても、熱や光を出して燃えるのではなく、大きく膨らんで破裂してしまうのです。
これは、ビーチでは深刻な問題のひとつとなっています。
では、そもそもなぜ死んだクジラは爆発するのでしょうか?
以下に、クジラが爆発するプロセスについて詳しくみていきましょう。
クジラが命を落とす原因
クジラは、分厚い脂肪に包まれた世界最大の哺乳類。
特にシロナガスクジラにいたっては、最大のもので長さ30メートル近く、200トンともいわれています。
そもそもクジラが死ぬ原因は、船と衝突したり、漁業の被害にあったりなど人間が原因となるケースがほとんどです。
漁船の騒音で健康状態が悪化したり、コミュニケーションが妨害されて餌場にうまくたどりつけなかったりするケースも考えられます。
さらに、海水温の上昇によるエサの減少や老化などの自然なプロセスが加わって、絶滅の危機に瀕している種もあります。
死後のクジラの体内で起こること
クジラが命を落とすと、ほとんどの場合、その体は海の底に沈みます。
海に沈んだ後、大型の深海サメをはじめ、腐った肉を食べるヌタウナギやオオグソクムシなどが、軟部組織を取り除き、死体をバラバラにします。
その後、骨を食べるオセダックス(Osedax mucofloris)のような環形動物らによって、骨まで分解されるのです。
信じられないかもしれませんが、この分解プロセス全体に約30年はかかるといわれています。
しかしまれに、海の底に沈む代わりに、クジラの死体が浜辺にたどり着くケースもあります。
そして、座礁したクジラを何もしないで放置しておくと、時の経過とともに死体が膨らみ、風船が破裂するように爆発してしまうことがあります。
クジラが爆発する理由
重要な問題は、なぜ死んだクジラが爆発するのかということです。
その背後にある問題を生物学で解明していきましょう。
クジラが死ぬと体は腐敗プロセスを開始します。
胃や他の大きな内臓がくさって二酸化炭素やメタンなどのさまざまなガスが発生し、体内に蓄積し始めます。
分厚い脂肪は死後も体温を高く保ちつづけ、腐敗をさらに進行させるだけでなく、これらのガスの逃げ場を失わせます。
すると、細胞内が酸性環境になり、細胞膜は破裂して、組織が分解されます。
体が膨張する
同時に、体内にすでに存在するバクテリアによる腐敗と呼ばれるプロセスによって、これらの壊れた組織に存在する炭水化物とタンパク質も分解されます。
腐敗によって、臓器は液化し始め、より多くの二酸化炭素や窒素、メタンが放出されるので、死体は風船のように膨張していきます。
場合によっては元のサイズの2倍に膨らむこともあります。
そして、体が高圧に耐えられなくなったとき、口の直腸やその他の開口部から液体とガスが噴出するのです。
しかし、この自然なプロセスではクジラはほとんど爆発しません。
クジラの体はある程度までは、高い圧力に耐えることができるからです。
爆発を引き起こすのはほとんどが人間の行為によるもの
驚くかもしれませんが、クジラの爆発は通常、人間によって引き起こされます。
多くが、座礁したクジラに登ろうとしたり、死体を動かしたりするときに、皮膚の破裂を引き起こし、大規模な爆発を引き起こしてしまうのです。
また、死体の皮膚に触って、感染症を広める致命的なバクテリアと接触する可能性もあります。
これが、クジラの死体には近づいてはいけないといわれる理由です。
クジラの豆知識
どうやら、座礁したクジラを見つけても、むやみに近づかず、死体が自然に分解されて土となる日を待つ方がよさそうです。
世界では、毎年約 2,000 頭のクジラの座礁が記録されていることをご存じでしたか?
また、クジラは大きく分けて、口の周りにひげのある「ヒゲクジラ」と歯がある「ハクジラ」の2種に分けらることも豆知識として知っておいてくださいね。