トンボはなぜ複眼なのか?メリットとは

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科学者らは、虫の複眼による映像は不鮮明で、私たちがカメラでズームアップしすぎたときのようにぼやけていると考えています。

それにもかかわらず、なぜトンボは複眼なのでしょうか?

実は、トンボの複眼は、極端に視力は悪くとも、捕食者から身を守るための視野の広さをもち、光の感度を向上させてエサの捕獲に役立っているのです。

今回は、動物が世界をどのように感じているのかについて、トンボの目にクローズアップし、人間にはない機能をもつ複眼の仕組みを紹介していきます。

人間と動物の視力の違い

今、さまざまな研究によって、動物が世界をどのように感じ、外部の情報を集めているのかが解明されつつあります。

たとえばワシは、私たちと同じ2つの眼を使っていますが、視力に関わる視細胞が人間の7倍、8倍もあるとわれ、鋭い感度をもっています。

数キロメートルも離れた上空から、エサとなるうさぎを見つけ出せるのです。

色の見え方(色覚)に関しても、(3種類の錐体細胞をもつ)私たちの目は、赤、青、緑の3つの色(光の3原色)ですべての色を表現していますが、(4種類の錐体細胞をもつ)ワシの目には紫外線も見えていることまで分かってきました。

クモに関しては、頭の周りにある8つの眼で広い視野をもち、あらゆる角度から他の生き物の動きを感知できます。

トンボの一見すると2つのように見える眼は、実際には2万個もの小さな眼がぎゅっと集まったもので形成されています。

このように、動物は、生きるために、私たちとは異なる感覚器の能力や仕組みを使い、外からの情報を集めているのです

目で物が見える仕組み

私たちの2つの眼球には、それぞれに一つのレンズ(水晶体)があります。

水晶体は、カメラのレンズと同じ役割をもち、レンズの厚みを変えることで眼に入ってくる光をまげてピントを調節し、網膜と呼ばれるスクリーンに鮮明な映像を映し出すのを助けています。

眼から入った光エネルギーの情報は、網膜の視細胞と呼ばれるところで電気信号(電気エネルギー)に変えられて、脳に届けられることで外部の情報がイメージ化されるのです。

それでは、トンボの複眼は、どのような仕組みになっているのでしょうか?

複眼の仕組み

トンボのようにたくさんの小さな六角形の目が束になって集まってできた目を「複眼」と呼びます。

複眼は、数千から数万個のレンズが集まった薄い層でできています。

トンボの複眼は規則正しい六角形ですが、形や数は昆虫の種類によって異なります。

トンボの複眼の一つ一つの眼「個眼」を見ていきましょう。

全ての個眼はそれぞれに一つのレンズをもち、光を取り込んでは脳にイメージ画像を送っています。

トンボの一つ一つの目が映像を送るなら、テレビがたくさんあるってこと?

いいえ、そうではないの。一つ一つの独立した目からくる映像を組み合わせて全体像を作るイメージよ。「ジグソーパズル」みたいなものよ。

それぞれのレンズから送られた小さなパズルのピースを、脳はつなげて一つの大きなイメージ画像を作るのです。

科学者らは、虫の複眼による映像は不鮮明で、私たちがカメラでズームアップしすぎたときのようにピントがぼやけていると考えています。

複眼はぼやけて見えにくいのに、なぜトンボは複眼なの?

なぜトンボは複眼なのかを理解するには、まずトンボの眼の写真を見てみるのがよいでしょう。トンボの眼は、頭をぐるりとほぼ覆っていますね。

つまり、トンボは、目の前で起こっていることだけでなく、頭の後ろで起こっていることも同時に見ることができるのです。

極端に視力は悪いけど、視野が広いんだね。それはトンボにとってはどんなメリットがあるの?

捕食者から逃れるため

たとえば、トンボを狙った捕食者が背後から近づいてきたとします。トンボは、それが何か鮮明には見えませんが、近づいてくる捕食者の大きさやそれが動く物体かどうかなどを感知できます。

エサをたくさん捕獲できる

トンボの目は、一度に広い範囲を見渡せるだけではありません。たくさんの個眼を使って光を集められるので、暗闇に強く、一夜にして何百もの虫を捕らえて食べるといわれています。

このように、一つ一つの独立した個眼で見れる視野は狭く、物の形をとらえるまではできませんが、昆虫は、個眼の数をたくさん整列させて複眼にすることで、視覚の解像度や周辺視、光への感度を向上させてきたと考えられています。

複眼のまとめ

いかがでしたか?

鳥の目が、効率的に光を集め、人間より多くの色を見ることができるように、昆虫たちは、独自に進化させた複眼の機能を使って、人間にはない広い視野で世界を感じとっていることが分かりましたね。

このような自然界の生き物についての研究は、特にロボット工学の分野で大きく貢献しています。

昆虫の複眼についても、未だにナゾは多く残されていますが、小さなレンズを集めた人工の複眼は、自動運転の技術開発などに活かされているのです。

参照元:https://youtu.be/iBZgkGUD224