アラビア半島にある死海と呼ばれる湖には、毎年体をぷかぷか浮かばせる入浴のために、たくさんの観光客が訪れます。
果たして、この死海で溺れる可能性はあるのでしょうか?
おそらく「泳げない人はプールでも死海でも溺れるに決まっている」と答える人は少なくはないでしょう。
しかし。その答えは100%正しいわけではありません。
それには「浮力」の問題が関係しています。
以下に「死海で溺れることはできるか」について、浮力の原理をもとに分かりやすく紹介します。
死海とは
イスラエルとヨルダンの国境にある死海は、平均的な海面よりも400mも低い位置にある塩湖です。
塩分濃度が海水の10倍も高いため、生物は体内の塩分調節ができず(浸透圧の関係で体内の水分が奪われる)、死海では生きてはいけません。
実は、はちみつが腐りにくいのも、112mの高木が乾期で生きられるのも、淡水魚が水分補給をする必要がないのも、塩分が植物を枯らすのもこの浸透圧が関係しているのです。
そして、この死海は、浮き輪なしでも湖に浮いたまま本が読めるほど「浮力」が大きいことで知られています。
浮力とは
浮力とは、水などの流体が物体に上向きに与える力です。
ある物体の一部、または全体が、水などの流体に浸かっているとき、その物体には上向き(重力とは逆向き)の力が作用します。
一つ例を挙げましょう。
木片を水に置いて、下へ下へと押すとき、何かが木を押し上げているように感じます。手を離すと木片はそのまま浮いてきます。
これが「浮力」と呼ばれるものです。
死海は、他の海に比べてたくさんの塩分が溶けているため、水の密度は高くなります。
つまり塩分の存在によって、「死海の水の密度」が高いために、私たちの体重を浮かせるのに十分な浮力が発揮されるのです。
このとき、私たちの体は、完全に浮かぶわけではありませんが、体重と浮力のバランスが等しくなったところでとどまることができます。
このようにして死海に浮かぶことができれば、塩湖の水を誤って飲むようなことがない限り、基本的には、死海で溺れることはないでしょう。