人間にそっくりな歯をもつ不気味な魚「シープスヘッド」

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おそらくシープスヘッドを見た人は「海で誰かが落とした入れ歯をはめている」と不気味がるでしょう。

シープスヘッドは、体高が体長よりも長く、鋭い背棘を持つタイ科の魚です。

ウロコとトゲのせいで食用価値としては限られていますが、人間の歯と似た歯を持つことで有名な魚。

さっそくこのユニークで魅惑な魚についてみていきましょう。

シープスヘッドの体の特徴

通常、体長は25〜50cmですが、最大で90cm近くの大きさに成長することもあります。

平均体重は10kg弱。

「シープスヘッド」という魚は、他のいくつかの魚種を指す場合がありますが、ここでは、シープスヘッドフィッシュとして最も一般的に呼ばれる種、アルコサルグス・プロバトセファルス(Archosargus probatocepalus)について紹介します。

体は、顔のすぐ後ろから高く盛り上がっていて、鼻は短く、口はほぼ水平で先が下向きです。

鱗には細かいギザギザがあり、背中には鋭い棘があります。

通常、体色は黄、緑、または、灰色で、5〜7本の黒い縦模様が付いています。

生育域

シープスヘッドは、北アメリカと南アメリカの海でよく見られ、マサチューセッツ州ケープコッドからフロリダ州を南下し、 メキシコ湾からブラジルまで生息しています。

この魚は、淡水と海水が混じりあう汽水域、特に雨水の流出と塩分を含む河口の合流点で繁殖します。

エサの好みと独特の摂食スタイルのため、環境の変化に対して脆弱です。

特に汚染や酸素レベルの低下に対する耐性が低く、汚染された水域を離れる傾向があります。

人間にそっくりな歯

上で述べたように、シープスヘッドの有名な特徴の1つはその歯であり、人間の口の中にある歯と不気味なほどよく似ています。

シープスヘッドの前歯は切歯のような形をしていますが、大臼歯がさらに奥に位置しています。

この鋭く厚い歯は、体長4.5mmのときから既に現れ始め、体長15mmほどになるとすべての切歯がそろい、同時に奥歯が臼歯に成長します。

シープスヘッドは、下顎に2列、上顎に3列の臼歯を持っています。

この重い歯列により、好んで餌とする殻付きの生物、カキやアサリなどの二枚貝やフジツボ、甲殻類などを粉砕してすりつぶすことができるのです。

エサと摂食スタイル

シープスヘッドフィッシュは雑食性であるため、多様な食性を持っています。

これらの多様な摂食者は、小型の脊椎動物、無脊椎動物、さらには植物さえもエサとすることで知られています。

ミシシッピ州の研究チームは、体長12~38cmのシープスヘッドフィッシュは軟体動物を食べることができますが、体が大きくなるにつれて、カニやミミズ、魚、その他の甲殻類を含む他の珍味に好んで目を向けるようになることを発見しました。

彼らの食スタイルは、生育場所、天候、餌の入手しやすさによって変化します。

軟体動物は主食でほぼ一年中食べられますが、春に魚を食べることを好み、夏には植物や残骸を食べることを好みます。

シープスヘッドは、そのきめの細かい白身とマイルドな口当たりが食通の間で人気ですが、重い鱗と硬い棘があるため、さばきにくい点が好まれません。

しかし、間違いなく興味深い海洋生物の1つです。

参照元:sheepsheadfish