そもそも、どうして乗り物酔いをするのでしょうか?なぜ、乗り物に酔いやすい人がいれば、生まれつきそうでない人もいるのでしょうか。
その原因を理解しておけば、乗り物酔いを防げる可能性が高くなるはずです。
以下に、科学的に考えられた乗り物酔いの原因について分かりやすく紹介します。幸いにも、乗り物酔いの症状を楽にする方法もいくつか分かってきています。
乗り物酔いとは
車酔いしやすい人の多くが、車や飛行機、船、電車だけでなく、遊園地のアトラクションでさえ酔ってしまうこともあります。
一般的に、子供は大人よりも酔いやすく、幼少期に車酔いをしても、成長するにつれて症状が軽くなったり、全く酔わなくなったりするともいわれています。
ここでは、乗り物酔いの仕組みを理解するために、まずは、車に乗るときに何が起こっているのかについて考えてみましょう。
あなたは、車に乗る時には、ただじっと座っているだけかもしれません。しかし、車が動くにつれて、実際にはあなた自身も車と一緒に移動(振動や傾きを経験)しています。
そして、これが、あなたの脳を混乱させてしまい、乗り物酔いを引き起こしている原因だといわれています。それでは、下記に詳しく説明していきます。
目から脳への情報は「体が動いていない」
まず、目が脳に伝える情報は(車の)イスに座っていることで、走っているわけでも、歩いているわけでもありません。そして、この目からの情報に基づいて、脳は、あなたが完全に座っている(動いていない)と思っています。
しかし、あなたの耳は、目とは全く違う情報を脳に伝えています。
耳から脳への情報は「体が動いている」
耳の役割は、ただ音を聞くだけではありません。耳の奥深いところにある小さくてとても重要な部分では、振動や体の動き(平衡感覚)に関する情報を脳に伝えているのです。
耳の中にある三半規管(さんはんきかん)と呼ばれる3つに分かれた管には、液体(リンパ液)と感覚毛(をもった有毛細胞)が存在し、頭が傾くとそれらの液体や毛も傾いて、体の傾きや動きを脳に伝える仕組みになっています。
これは、ちょうど、水の入ったガラスを斜めに傾けると、中の水も傾くのと同じ原理で、これによって脳は体の動きを知ることができます。
それでは、テーブルの向こう側に向けて、水が入ったガラスをすばやくスライドさせるとどうなるでしょう?
おそらく水は、コップの反対側の縁に向けてチャプチャプと波を立てます。
車が前方に移動するときには、耳の中にある液体に、このコップの水と同じような現象が起きることによって、耳は、体が動いていることを脳に伝えているのです。
つまり、感覚の不一致です。
じっと座っているはずなのに、体は動いている?
通常は、目や耳などの感覚システムから送られる情報は一致して、ともに働きながら平衡感覚をつかさどっています。
しかし、これらの目や耳から送られるメッセージがそれぞれに異なる場合、脳がそれを不快に感じて、吐き気やめまいを生じさせる可能性があります。
この乗り物酔いのメカニズムは、完全に解明されているわけではありませんが、一部の科学者は、それぞれの感覚器官から脳に送られるこの混沌とした情報(信号)が、毒物を食べたときの幻覚のように脳を反応させてしまったことが原因だと考えています。
すると、脳は、実際には毒なんて存在しないにもかかわらず、体から毒を出そうとして、吐き気や嘔吐などの症状を引き起していくというのです。
乗り物酔いを効果的に防ぐ方法
幸いにも、乗り物酔いをしやすい人が、気分を悪くしないためにできることがいくつかあります。
乗る前に軽い食事をとる
乗る前の食事は、食べ過ぎても、少なすぎてもいけません。
基本的に、胃の負担を軽くして、よいコンディションにしておくことが、吐き気を抑えるのに有効だといわれているため、空腹、または、満腹状態で乗るのは避けた方がよいでしょう。
窓の外の景色をみる
科学者たちは、車に乗ったら、窓から大地と空の境目である「地平線」、または、「道路」を見ることが大いに役立つといいます。
なぜなら、目が、車の動きを脳に正確に伝えることができるからです。
それによって、目と耳から送られる情報が「一致」し、脳の混乱や不快感が取り除かれやすくなります。
同じ理由で、車に乗っている間は、本を読んだり、タブレットや携帯でゲームをしたりしない方がよいでしょう。
車の中で、目の前の何かをじっと見つめていると、ただじっと座っているような情報を目が脳に送り、気分が悪くなる可能性があるからです。
とにかく、乗り物に乗っているときは、木々や空、道路標識、他の車など、できる限り窓の外を見るように努めましょう。視界がよい前の座席に座ったり、揺れが少ない席に座ったりするのもよいでしょう。
それによって、脳の混乱を防げるだけでなく、心身をリラックスさせることにもつながるので、乗り物酔いの予防に有効だと考えられています。
自律神経を整える
睡眠不足や疲労の蓄積は自律神経を乱して、乗り物酔いの原因になります。
乗る前に車内のそうじや換気をして、嫌な臭いを取り除き、移動中にリラックスできるような快適な環境を作ってください。気分が悪くなったら、窓を開けて外の空気を吸って気分転換してみるのもよいでしょう。
乗り物への恐怖心や不安、ストレスなどは、かえって乗り物酔いを誘発しやすいので、酔い止め薬など少しでも不安を取り除けるものを取り入れてみるのもおすすめです。
そして、振動を減らすためにも、運転者はやさしい運転を心がけてあげましょう。
乗り物酔いについてのまとめ
研究がすすむにつれて、乗り物酔いは、「目と耳から脳に送られる信号(情報)の不一致」と「胃の状態」が深くかかわっていることが分かってきました。
今まで乗り物酔いに苦しめられてきた人は、この2つのポイントに注意して、上記の対策をうまく取り入れてみてください。
次からは、少しでもリラックスして旅を楽しめることを祈っています。
生まれつき乗り物酔いへの免疫力が高い人でなくても、幼少期に少しずつ乗り物に慣れていくことで、成長するにつれてバランス感覚(目と耳からの感覚を一致させて働く力)が鍛えられ、乗り物酔いの症状は軽減されていくともいわれています。