キャンプファイヤーやバーベキューで、場所をかえてもなぜか煙が自分に向かってくる理由について科学的に分かりやすく紹介します。
どうやら煙があなたを追いかけるようにみえるのは、焚火による周囲の温度差によって引き起こされた空気の流れを、ブロックしていたからのようです。
そして、それは変えることのできない「物理法則」で成り立っています。
以下に煙が襲ってくる理由を分かりやすく紹介します。
火は近くの空気を温めて循環させる
煙はすべて火から始まります。
火は多くのエネルギーを熱として放出します。すると、火の近くにいる空気分子はその熱エネルギーの一部を吸収して動きが速く活発になります。
温度は、分子がどれだけのエネルギーを持っているかを調べるための測定値でもあるため、それは空気が(熱)エネルギーを持ち始めたことを意味します。
熱を持って高速で動き始めた分子は、周りの低速(低温)で動く分子と衝突すると、その分子を(火とは)反対方向に押し飛ばし、火のそばの熱い空気を膨張させるスペースを確保します。
このような一連の現象により、火の近くの空気は、周りの空気よりも密度が低くなります。
密度が低い空気(熱を持った空気)は上昇すると聞いたことがあるかもしれませんが、それは本当です。
(あたたかい空気ほど軽いので)冬は最上階に、(冷たい空気ほど重い)ので夏は地下に住んだ方がいいというのは、そのとおり!
また、密度の低い空気は、それと入れ替わる冷たい空気よりも重さが軽いので上昇すると聞いたことがあるかもしれませんが、これも真実で、これは説明というより定義です。
密度が低い空気は、密度が低いから上昇するというだけ。
軽い(密度が低い)と上昇する仕組み
宇宙から見ない限り、空気は目にはみえませんね。しかし、空気にも重さはあります。重さのあるものはなんでもかんでも地球の重力によって下に引っぱられています。
さらに、私たちはただ気づいていないだけで、実は地球上の全てのものは見えない力、「空気」に押される力を受けているのです。
空気自体にも、それより上の空気の重さがかかっていますが、押された反対側(地面との間)にも空気があり、同じ力で上向きに押し返し続けています。
このように、周囲の空気同士が押し合う力を気圧といい。空気が重い(密度が高い)かどうかで気圧の高さは決まります。
密度の高い(重い)ものが落ちるのは、地上から遠く離れるにつれて、周囲の空気の力(気圧)が小さくなって(密度が低い=体積あたりの空気の重さが軽い)いくからです。
図1、高度が高いと空気の密度が低い
図2、地上に近くなるほど空気の密度が高い
もし、あなたの体が軽くて(密度が低い)、重力で(下向きに)引っ張られる力が、空気で押し上げられる力より小さければ、熱気球のように上昇することができるでしょう。
しかし、あなたはそうではありません。空気があなたを押し上げる力よりも、あなたを押し下げる重力の方が大きいので、空に飛んでいくことはないのです。
火の周りの空気は上昇する
一方、火の周りの熱い空気は、周りの空気よりも密度が低くなっています。
そのため、重力によって下に引っ張られる力が、周囲の空気が押し上げる力よりも小さくなり、空に向かって上昇するのです。
これを対流といいます。これは太陽でも、地球でも、あなたの家のオーブンでも起こります。
そして、最も重要なことは、対流が火の周りで起こるということです。
気温の違いが気圧の差になり空気の移動が起こる
煙が顔にかかる理由を理解する本当のカギは、上昇する空気がそれ自体で上昇するわけではないことです。
煙は、周囲の空気に押されて上昇するからです。
熱い空気が上昇して火から離れると、入れ替えに冷たい空気が残された隙間に入ります。
そして、ここからがあなたの出番です。
あなたが空気の流れをブロックする壁になるから煙が向かって来る
あなたは、ただ火のそばに座ってマシュマロを焼いているだけだと思うかもしれません。
火はあなたに影響を及ぼしていますが、あなたは火に影響を与えていないと考えるでしょう。
しかし、実際にあなたは火に影響を与えています。
冷たい空気が入れ替えに入るところにあなたが壁を作ることで、一種の真空状態を作り出しているのです。
つまり、あなたの体はあなたの後ろの空気が火に向かって移動するのをブロックしています。
だから、火の方から来た空気が、火から出た煙やススを連れて、そのまま火を通って自分の顔に向かってくるのを止めるものは何もないのです。
そして、空気を遮断しているのは自分なので、自分がどこに移動しようとも関係なく空気を遮断してしまいます。
さらに厄介なことに、人が多ければ多いほど、その空気の流れが遮断されるため、一カ所に多くの人がいればいるほど、真空状態は強くなります。
焚火の煙が自分に来るのを防ぐ方法
つまり、煙が目や肺に入るのを避けたいなら、友達と肩を寄せ合うより、ひとりでいる方がいいということです。
また、煙の正体は、火が十分でなかったり、酸素が足りなかったりして、燃え残った薪の化合物です。
最近販売されている無煙の焚き火台は、空気の通り道を増やすことで、煙の発生を抑えたり、消したりすることができるので活用してみるのもよいでしょう。
そうでなければ、分度器を持参することをお勧めします。
分度器があれば、みんなが等間隔に座れるので、どの方向からも同じ量の空気が遮断され、空気の真空状態に偏りがなくなります。
まさにパンデミックのようなもので、外にいても、友達に近づきすぎると、目に煙がいっぱい入るという罰を受けてしまうようです。