おそらく芽キャベツを2000年くらい前に食べていたら、苦くてにおいもひどく、もう2度と食べる気がおきなかったでしょう。
しかし、そんな芽キャベツも、最近ではスプラウトの生産者が、需要に追いつくのに大変なほど世界的に人気のある野菜になりました。
一体芽キャベツに何が起こったのか?
どうやら、芽キャベツ自身の化学的な変化と私たちの調理法の変化が関係しているようです。
以下に、芽キャベツを人気にした2つの主な原因を紹介します。
芽キャベツって何?
芽キャベツは、ブリュッセルスプラウトとも呼ばれ、キャベツの仲間(アブラナ科)です。
キャベツをそのまま小型にしたような姿から、大きくなるとキャベツになると勘違いされやすいのですが、これが成長した姿。
そして、この芽キャベツが人気になった理由には、主に2つのことが関係しています。
まずは、この奇妙で小さなボールで起こっている化学を理解していきましょう。
芽キャベツに含まれる辛みとにおいのもと
芽キャベツには、グルコシノレート、または、GSLと呼ばれる化合物が含まれています。
自然界では、これらの化合物は害虫を撃退するための化学的防御システムとして機能します。
わさびに含まれるあのツンとした辛み成分と同じ硫黄化合物で、植物が草食性の害虫にかじられると放出して身を守っているものです。
私たち人間も、それらの害虫と同じ感覚的なものを持っているので、その化合物への苦みやえぐみを感じるようになっています。
幸いにも、これらの苦い化合物は、調理によって分解されるのである程度の不快感を取り除くことができますが、残念ながらそれらが分解されるときの揮発性物質は、強烈なにおいを放つ場合があるようです。
芽キャベツが嫌われる原因
なんとそれらのにおいの元は、腐った卵の下水道やおならによって放出されるのと同じ化合物の一種なのです。
そして、この不快なにおいは、芽キャベツに限ったものではありません。
なかでも、芽キャベツは若く、植物の活発に成長している部分なので、特に高濃度のGSLを持ち、含まれる特定のGSLにはとても苦く、強烈なにおいをもつ硫黄化合物に変わる可能性が強いようです。
そして、それがこれらの小さなボール「芽キャベツ」が嫌われやすい理由でした。
しかし、この小さなボール「芽キャベツ」には、過去に、2度の転機が訪れます。
芽キャベツの化学的な変化
最初は1990年代後半、生産者によってGSL濃度が低い芽キャベツの栽培が開始されたこと。
これは、苦みや辛みが少なく、においが抑えられた芽キャベツを意味します。しかも、これらの芽キャベツは、糖度が高かったため、この余分な甘さが、苦味を隠すのにも役立ちました。
つまり、今日私たちが食べている芽キャベツは、数十年前のものとは化学的にかなり異なっているのです。
調理法の変化
2番目の幸運は、ほぼ同じ時期に、料理のトレンドが変化したことです。
人々は野菜を茹でたり蒸したりよりも、ローストやソテーを好むようになりました。
これらの調理方法の変化は、芽キャベツをいくつかの理由でよりおいしいものにしたのです。
水で調理しなくなった
まず、オーブンで焼いたり、フライパンで炒めたりする方法(乾熱)は、水で調理するのとは多少異なる方法でGSLを分解するため、においの元(揮発性物質の混合物)の放出を抑えられます。
第二に、ローストやソテーは、調理加減をコントロールしやすいため、芽キャベツをちょうどよい硬さに調理しやすい傾向があります。
芽キャベツは、加熱調理が足りなさすぎると辛みが残り、逆に調理しすぎるのも臭いにおい物質を放出するようになるのでいけません。
さらに、芽キャベツをソテー、またはローストすることで得られるカラメル化も役立ちます。
カラメル化によって、フレーバーと甘さが追加され、それが残された苦味を隠すのに役立つのです。
つまり、調理によってGSLの分解加減を調節することで、少しの苦味、少しの土っぽさ、少しの甘さ、少しの油っぽさ、少しの酸味、そして少しのうま味の組み合わせが本当に素晴らしい芽キャベツが生まれやすくなったのです。
芽キャベツを食べよう
芽キャベツは、栄養も豊富なのでぜひ自分にあった調理法を見つけてみてください。
栽培地や種類の異なる芽キャベツをはじめ、食べる時期もいろいろと試してみるのもよいでしょう。
芽キャベツがどこでどのように栽培され、どのように保存されるかによっても、GSL比率と全体的な濃度が変わる可能性があります。