実は、もともとテニスボールは白色でした。
しかし、その後、黄色に変更されました。黄色いボール、特に蛍光色の方がテレビに映りやすいという研究結果が出たからです。
カラーテレビが普及してからは、国際テニス連盟も黄色いボールを公式に認定し始めます。
人の目に最もよくみえる色が採用されたことで、ボールを目で追いやすくなり、結果的に、テニスを観戦しやすくなったのです。
また、現在のテニスボールがフサフサしているのは、その表面の毛羽立ちがスピードを変え、ボールの回転を効果的にするのに役立つからです。
以下に、テニスボールの毛羽立ちが実際どのようにテニスというスポーツを変えていったのかをみていきましょう。
昔のテニスボールと今の違い
テニスは、フランスのルイ10世の時代に宮廷で生まれました。
12世紀に使われていたのは、羊毛をボール状に丸めて、表面を布や皮で覆ったものでした。現在はゴムのボールに、ウールやナイロン、綿などの繊維が縫いつけられています。
そして、テニスに革命をもたらした重要な構成要素のひとつが「ナップ」として知られる表面の毛羽立ちでした。
テニスボールの毛羽立ちの役割
テニスボールが空気中を移動するとき、毛足の1本1本が空気の障害物のように作用します。このように、空気がボールの動きを妨げる力を空気抵抗といいます。
滑らかな表面では、空気との間に摩擦は生まれないため、ボールは空中を速く移動できます。
サーブを打ったばかりのボールの速度は、相手に届くころには3分の1近くまで落ち、コートでバウンドするとさらに減速するといわれています。
これに加えて、毛羽立ちはスピン(回転)も増幅させます。
ボールを減速し回転効果を高める
ボールが時計回りに回転しているのを想像してみてください。
ボールの上方では、空気の流れは回転方向と同じです。
しかし、ボールの下では逆向きになっています。
この逆方向の力と毛羽立ちによる抵抗が相まって、ボールの下での空気抵抗がさらに大きくなります。
そのため、下側の圧力は上側よりもはるかに高くなります。
この圧力差が揚力となり、スピンを増幅させるのです。
テニスプレーヤーは、この毛羽立ちによる抵抗力をたくみに利用して、ボールにさまざまな回転をかけ、進行方向をコントロールしているのです。
よくテニスプレーヤーが、試合前に念入りにボールを選んでいる姿を目にしますが、これは毛羽立ちがほぼ完全に覆っているボールを探しており、試合中も毛羽立ちが損なわれると頻繁にボール交換が行われています。