ジーンズの大きなフロントポケットの内側にある小さなポケット。
これは一体何のためにあるのか不思議に思ったことはありませんか?
実は、この一見取るに足らないポケットには驚くほど豊かな歴史と機能面での重要な目的があります。
以下に、小さなポケットの起源、進化、現代の用途について掘り下げて紹介します。
カウボーイや鉱夫が懐中時計を入れるためのシンプルなデザインが、現代のデニム ファッションの万能な要素へと進化した様子をみていきましょう。
ウォッチポケットの起源
「ウォッチポケット」として知られる小さなポケットの歴史は19世紀に遡ります。
物語は、1873年、リーバイ・ストラウス( Levi Strauss)とジェイコブ・デイビス(Jacob Davis)がブルージーンズを発明して作業服に革命をもたらしたリーバイ・ストラウス社(Levi Strauss & Co.)の話からはじまります。
彼らは、男性用作業ズボンに鋲(びょう)を入れて耐久性を高めるプロセスの特許を取得しました。
これらのズボンは、カウボーイや鉱夫など厳しい条件に耐えられる丈夫な衣服を必要とする労働者のために設計されました。
そして、小さなポケットは、1800年代後半にこれらの労働者が直面していた問題への解決策として考えられたのです。
ウォッチポケットが生まれた理由
腕時計が普及する前、労働者にとって時間を把握するために不可欠なものが懐中時計でした。
しかし、彼らは、貴重な懐中時計を肉体労働の厳しさから安全に保管する必要がありました。
ここで、フロントポケットの右側の高い位置にある小さなポケットが誕生。
ポケットは、懐中時計を安全に保管できる場所を提供し、損傷から保護し、簡単に取り出したりしまったりできるようにしました。
懐中時計入れから多目的に変化
20世紀初頭には、懐中時計にかわって、腕時計の方がより一般的になりましたが、この小さなポケットはジーンズの定番の機能であり続けました。
それは、ジーンズを着用する人々の変化するニーズと習慣に適応し、さまざまな目的で使用されてきたからです。
1950年代から1960年代には、コイン、マッチ、ライターといった小さなアイテムを保管するのに便利な場所となりました。
1970年代から1980年代にかけては、デニムが作業着ではなくファッションとして流行するにつれて、小さなポケットは美観的な要素に貢献。
そして今日もポケットは、歴史的に重要な本来の目的が忘れ去られているにもかかわらず、ほとんどのジーンズの特徴であり続けています。
現代のウォッチポケットの役割
現代では、ギターのピック、USBドライブ、ライター、コイン、カギ、さらには小さなボトルのハンドサニタイザーなどの小物の保管など独自の用途をもちます。
特に、デジタルテクノロジーでの使用は画期的で、メーカーには、iPodやコンパクトなガジェットなどの小型デバイスに合うようにポケットを改造したところもあります。
セキュリティーの必要性への高まりとともに、デジタル盗難を防ぐためにポケットにRFIDブロック機能素材を取り付けたメーカーもあります。
ただし、ポケットの主な機能は変わっていません。
ポケットはジーンズの象徴
ジーンズの小さなポケットは、長年にわたり文化的にも重要な意味をになってきました。
ジーンズの実用的なルーツと、世界的な定番ファッションへの進化の両方を表すデニムファッションの永続的なシンボルです。
いずれにせよ、この小さなポケットは、進化し続けるファッションの背後にある職人技と歴史を評価するデニム愛好家にとって魅力的なディテールであることにはかわりません。
ファッションの歴史の一部として鑑賞する際に分かる、大きな物語を持つ小さなディテールなのです。
これからも、小さなポケットに収納される特定のアイテムは時代とともに変化する可能性はありますが、ポケット自体は、デニムの実用的なルーツと、環境に適応する能力を思い出させてくれるでしょう。
ジーンズにある小さなポケットの役割については以下の動画で分かりやすく紹介されています。