地震検知対決「人間vs機械」予想外な結果とは

2021年10月 9日

今、世界では、何万もの地震観測所が、地域の地震活動を24時間体制で継続的に記録しています。

たとえ足元に揺れを感じない程度の振動でも、その中には科学者にとって有益な情報が含まれているかもしれないのです。

しかし、データはあまりに膨大で、それは地震科学者の処理能力をはるかに超えています。

そこで、ノースウェスタン大学の研究者は、2000人以上の市民(科学者)に呼びかけて、地震の記録を(視聴覚フォーマットに変換し、クラウドベースで)分析する試みを行いました。

市民の力を借りて、地震検知能力を上げようという試みです。

その結果、なんと市民が少なくとも機械学習と同等の精度を持ち、以前は訓練を受けた専門家にしかできなかった地殻変動の識別も可能であることがわかったのです。

この成果は、Frontiers in Earth Science誌に掲載されました。

今回は、地震についての専門知識のない市民が、AIと地震検知能力を対決して勝利した驚きの研究結果を紹介します。

地震検知対決「人間vs機械」

2020年の研究では、膨大な地震の観測データを整理するために、人間vs機械の対決を企画されました。

地震検知のヘビー級チャンピオンを決めるのです。

なかでも研究者たちが特に注目しているのが、「遠地地震」と呼ばれるものです。

これは、遠く離れた場所で発生した大きな地震の波が、地震活動の活発なプレートなどに到達すると、小さい地震や地殻変動などを部分的に引き起こすというものです。

地球物理学者の間では、ある地震が別の地震を誘発するメカニズムについて、まだそれぞれの意見は一致していません。

そのため、地震のデータを整理することで、地震がいつ起こるのか、または起こらないのかが分かれば、遠隔地においてどのような地域が地震の危険性が高いのかを予測するのに役立つかもしれません。

一般の市民が地震か地殻変動か雑音を分類する試み

研究者たちは、2013年から2018年の間に世界のどこかで発生した大地震の波が、アラスカ周辺の地震観測所まで到達したとされるデータを使い、大きな地震がきっかけとなった震動と地震を伴わない地殻変動の両方を検出しました。

地震を伴わない地殻変動は、地殻の奥深くで何千回ものゆっくりとした小さな振動が連続して発生するもので、瞬時にエネルギーを放出する地震に比べて、ゆっくりと弱いエネルギーを放出した揺れです。

まず、人間のコーナーでは、2000人以上が、「地震探知」のボランティアとして参加してくれました。

彼らは地震学の専門家などではなく、協力を買って出た一般の人たちです。

彼らは、目に見える波形と音声ファイルに変換された地震データの断片を視聴しました。

私たちの脳は、音を聞くと、自然にその音を分析して分類するという素晴らしい仕事をしてくれるため、それを期待して分析を一般の人にお願いしたのです。

この際、地震の初期データを音に変換することで、違いがわかりやすくなるため、それぞれのデータを、画像認識や音声認識するわけです。

この場合、地震は、ドアをバタンと閉めるような音ですぐにわかります。

一方、地殻変動による揺れは、線路の上を走る電車のような音で、それらを地震とは無関係な風や静電気のような背景音とも分類しなければなりませんでした。

AIに揺れを分類させる試み

しかし、彼らには競争相手がいました。

反対側のコーナーには、機械学習アルゴリズムの「AIチーム」がいました。


AIチームは、深層学習(人間の脳の神経の仕組みを再現したニュートラルネットワークにもとづくアルゴリズムを利用した機械学習)モデルであり、複数の特徴に基づいてデータを分類する能力を持っています。

深層学習モデルには、複数の特徴に基づいてデータを分類し、過去の推測から学習して予測を改善する機能がありました。

AIは、未知の地震データの一部を、専門家たちが特定した参照データベースと比較して、最も類似した例を見つけ出して分類することで、地震を特定します。

もちろんチームの勝敗を決めるためには、地震学者である審判員が自ら地震を識別して正解を知る必要もありました。

市民チームがAIに勝利

実験の結果、なんと地震分類能力で勝利したのは市民チームでした。

彼らの地震検知精度は85%で、AIよりも10%近く優れていました。

地殻運動による震動は、地震の分類ほど正解率は高くはありませんでしたが、当時、地殻変動を検出できるAIはなかったため、それでもやはり人間が勝ったのです。

さて、だからといってAIが地震検知能力の戦いから撤退したわけではありません。

この最初の対決の後、事態は予想外の展開を見せました。

一年後には、AIが勝利、しかし人間の力を借りて

研究者たちは、この実験以降、AIがより良い仕事ができるようにと市民ボランティアのデータを使ってAIを訓練し続けました。

その1年後に発表された別の研究では、AIは人間を超える地震検知能力を持っていたのです。

この訓練によって、AIは初めて地殻変動を検出できるようになりました。

最終的に、この対決から得られた教訓は、人間と機械は競争するよりも協力したほうがより多くのことを達成できるということです。

人間と機械は競争するよりも協力すべき

地殻変動は、地震を伴わない地殻変動の発生場所を示すと同時に、地震の発生にも関係していると考えられているからです。

これからAIは、地震を検知するためのツールとしてますます重要になっていくでしょう。

しかし、それを正しい方向に導くためには、市民ボランティアの努力も必要です。

この種の遠隔地がきっかけとなった地震を検知できるAIが訓練されたのは、今回が初めての試みでした。

そこで研究者たちは、論文の中で、他の市民科学者たちにボランティアを募り、データを分類して、AIのトレーニングデータベースの規模を大きくすることを推奨しています。

つまり、人間はロボットがこのようなゴロゴロした地震の音をよりよく検出できるように手助けし続ける結果として、将来の地震のリスクを予測し、人間の安全を守ることができるのです。