エッセンシャルオイルの効果は本当にあるのか?

エッセンシャルオイルは本当に効果があるのか?美容と健康のためになる話

「エッセンシャルオイルの効果」について、過去の研究のやり方や結果をみながら科学的な視点で考えていきます。

非科学的に感じる人もかもしれませんが、実際にエッセンシャルオイルの香りが気分をポジティブでリラックスした気分にさせ、ときには痛みを軽減させる効果があることを示す研究は数多くあります。

しかし、頭が切れる人は、研究で得られたような心理的効果が「本当にオイルそのものがもたらしたのか」、「もしかしたら、他の要因が関わっている可能性もあるのでは?」など疑問を抱いているかもしれません。

さっそく以下に、エッセンシャルオイルの効果について科学的に見ていきましょう。

エッセンシャルオイルとは

「エッセンシャルオイル」は、直訳すると「必要不可欠な油」を意味します。

実際には、そんな名前にもかかわらず、私たちの体に必ずしも必要なものではありません。

本来は植物の体内にあって身を守り、子孫を残すという大事な役割をになっているオイルで、それを植物から抽出し、芳香物質として利用したものです。

これらのオイルは、数十種類の超小型で軽量の化合物からなる複雑な混合体で、一般的によくみられる臭いの分子とは異なり、非常に小さいので、簡単に大気中から鼻に入り込むことができます。

主成分は、炭素と水素原子の鎖からなるテルペン、または、炭素と水素原子が環上(リング状)に平らに並んだ芳香族化合物のいずれかで、これらの化学物質が混ざり合って、ペパーミントオイルやラベンダーオイルなど、あらゆるものを形成しているのです。

エッセンシャルオイルの効果

エッセンシャルオイルは、アロマキャンドルやローションなど、気分を落ちつけたり、集中力を高めたりするのに役立つといわれるさまざまな製品に使われています。

なかには、アロマセラピーが、不安障害やうつ病、癌を治療できると主張する人もいるほどですが、現実には 、市場にでまわる広告でどんなに宣伝されたとしても、オイルだけでそういった効果が得られることを示す研究はほとんどありません。

ただし、リラクゼーション効果や集中力アップに関しては、少なからず影響はあるとする意見が多いようです。

香りの心理的な影響力

数多くの研究で、鼻から入る化合物はすべて、人の気分を変えることができると示されています。

たとえば、「Journal of Physiology and Behavior誌」に掲載された2005年の研究では、香りが気分の変化もたらす影響が明らかにされました。

研究では、歯医者さんの待合室で、220人の患者を対象に、オレンジやラベンダーの香りに対する反応が調べられました。

すると、待合室で待っている間に、オレンジやラベンダーの香りを嗅いだ人は、陽気な音楽をかけた場合や全く香りのない場合と比較して、アンケートで、苦痛や不安が軽くなり、心がよりポジティブになって気分の落ち着きを感じる傾向が表れたのです。

「香りがもたらす効果」に対する研究から分かること

シチュエーションは違えど、歯医者の実験と同様の結果を示す論文は、何百とあります。

しかし、これらの研究をもってしても、エッセンシャルオイルが単体で本当に変化をもたらすのか、もしあるとするならどのように作用するのかはまだ分かっていません。

ネズミの脳において、エッセンシャルオイルが、ドーパミンやセロトニンのような脳で感覚を伝える神経伝達物質を増強する可能性があることが示された研究もいくつかあります。

また、心拍数や呼吸数をコントロールする自律神経系を鈍らせる可能性を示す研究もあります。

しかし、なぜエッセンシャルオイルにその作用があるのかは明らかではありません。

分かっている限りでは、これらのテルペン、または、芳香族化合物の分子が鼻の受容器に結合するときに、神経系を誘発する特定の経路は存在しないのです。

それよりも、香りが、もっと心理学的な理由で働いている可能性の方が高いかもしれません。

なぜエッセンシャルオイルが有効に働くのか

エッセンシャルオイルの精神的な働きかけについては、その作用や理由などまだ不確かなことが多く、研究の大部分が混乱に満ちているので、理解がすすむのは難しいのが現実です。

たとえば、鼻から入る香りそのものよりも、香りを吸うときの儀式的な習慣や状況の方が意味がある可能性もあります。

2006年の研究では、出産後の母親が、ラベンダーオイルやシトラスオイルでマッサージを受けると、不安感や疲れをあまり感じなくなったことが示されていますが、それは、精油の香りだけがもたらしたものではなく、マッサージによる効果であることも否定できません。

また、なぜこれらのオイルが有効に働くのかは、香りの好みや偽薬効果の問題もかかわってきます。

もしかしたら、オイルの化学的性質よりも、人の信念や信仰から得られた効果かもしれないのです。

あるいは、単体ではなく、さまざまな要因を組み合わせて考えることもできます。

エッセンシャルオイル効果の検証における問題点

今のところ、エッセンシャルオイルに関しては、科学的な問題点がたくさん残されているため、理由を特定するのが難しく、特に研究のやり方においては、下記の2点が大きな問題となっています。

研究のほとんどが、きちんと管理されてない
管理された研究とは、なんらかの中立的なものと試験状況を比較して、実験条件による効果を調べるやり方です。
二重盲剣法ではないケースが多い
二重盲剣法とは、先入観が結果に影響を与えるのを防ぐために、参加者も実験者も、誰が何を試験しているのか分からないように情報をふせて行うやり方です。

研究での被験者へのアンケートのとり方の問題

研究では、しばしばアンケートを使って被験者の感情を評価するように求めますが、質問のやり方によっては結果が歪められることもあります。

たとえば、先に述べた歯医者さんでの研究では、患者に対して、「今どのような気持ちか」を尋ねるのではなく、「どれくらい気持ちが落ち着いているか」を評価する(格付ける)ように求められています。

こうやって感情のヒントやオプションを与えることによって、人々に「落ち着く」という先入観をもたせたり、実際よりも気持ちを穏やかに見せる結果を導くことがあるため、そういった研究で得られた結果は、はっきりと科学的な証拠とはいえません。

エッセンシャルオイルの効果:まとめ

長い一日の終わりは、ラベンダーのエッセンシャルオイルを入れたお風呂でリラックスタイム。

あるいは、魅惑的なオレンジのアロマキャンドルに火を灯す。

これらの「エッセンシャルオイル(精油)」を嗅ぐ行為は、アロマセラピーの一環として、気分を変えたり、治癒効果をもたらすなどの目的で、しばしば習慣的に取り入れられています。

しかし、エッセンシャルオイルが、本当に及ぼす影響や、心理的な効果が得られる理由を理解するには、より一層厳密な研究をする必要がありそうです。

とはいえ、効果が科学的に実証されたものではないからといって、今あるアロマグッズやローションなどが全くダメだいうわけでもありません。

ただ明確ではないだけで、実際には、たくさんの研究でエッセンシャルオイルに関する心理的な効果が導き出されているのは事実なのです。

参照元:Do Essential Oils Really Work? And Why?