金の価値はなぜいつの時代も高いのか?

金の価値はなぜ高いのか?身近なふしぎ

金は、地球上に存在している絶対量が決まっていることから、希少な貴金属としての価値が高く、世界中で「実物資産」として考えられています。

しかし、実は、金よりも稀少であるにも関わらず、はるかに安価な金属もあります。

たとえば、オスミウムは、金の2倍近く希少性の高い金属であるにもかかわらず、価格は3分の1にも満たないのです。

どうやら金は、その美しさにとどまらず、もともとの希少価値に加えて、以下で示すように、産業資源としてや、投資家にとっての有用ツールとしてなど、さまざまな要因が合わさって価値を高めているようです。

今回は、宝飾品にとどまらない「金」の資源としての魅力、そして、金の価値がどのように生まれたのかをもとに、金の価値が高い理由を紹介します。

金はどのようにして生まれたのか?

そもそも、金は、いつからどのようにして、この地球に生まれたのでしょうか?

科学者たちは、次のように考えています。

宇宙にある2つの中性子星が衝突したときに金原子が作り出され、それが隕石になって約39億年前に地球に衝突し、その結果、金原子が持ち込まれた。

そして、何百万年もの年月をかけて、地球内部にある高温高圧のコアが金の塊を地表面に押しやります。

事実、金片は約4万年前の旧石器時代と推定される洞窟で発見されており、これが人が金と接触した最初の例を示しています。

そして、現在に至っては、輝かしい富の象徴に。

高価な製品を作るだけでなく、スマートフォンやスーパーカーなどを金でコーティングして付加価値を高める目的でも使用されています。なかには、ビーフステーキを金で覆ったり、アイスクリームに振りかけたりして豪華に演出されることもあります。

金とは、正確には何なのか?

金は多機能で、希少な金属です。

可鍛性(かたんせい)が高いため、衝撃や圧力を加えられても壊れずに柔軟に変形できる性質をもちます。

しかし、他の有用な貴金属との大きな違いはなんといっても、金独特の輝きや色合いでしょう。これらの要素は、地球上で金に多くの実用的で美的な用途を与えました。

花嫁にとって、愛と感情を完璧な姿で表現したものが金であれば、投資家にとっては、ポートフォリオ(いくつかの株式に振り分ける分散投資)における有用なツールです。

昔から、人々は、自分が富の要素を感じることができる物体を求めてきました。そして、その羨望の多くが、美しく、すばらしいデザインが施された金に向けられてきたのです。

製造業者やスマートフォン、タブレットなどを作る人たちにとって、元素記号Au、原子番号79の元素「金」は、すべての貴金属の中で最も貴い存在です。

電気を通すのに最適な素材であるうえ、腐食を起こさず、錆びないので、多くの製品に活用されています。

古代エジプト人をはじめ、世界中の文明社会においても美しい金は、何世紀にもわたって人々を魅了してきました。

彼らはそれを通貨として使用しただけでなく、金に入れられて埋葬すると神になると信じられている時代もありました。

事実、ツタンカーメン王は110kgにも及ぶ3層の金張りで包まれた棺の中に安置されていました。その最も内側の3層目は、純金に近い延べ板で、現在では1億円相当の価値があるといわれています。

実物資産としての歴史

1792年、米国議会は貨幣法を通過させました。これは、通貨価値の基準を金にして、金と貨幣(ドル)を一定比率で交換できる固定価格制度を確立したものです。

これによって、一攫千金を夢見る採掘者が、金の鉱脈を求めて押し寄せるゴールドラッシュが引き起こされました。

アメリカで初めて金鉱石が発見されたのは、1799年。12歳のコンラッド・リードが、家族で運営するノースカロライナの農場で、17ポンド(約7.7キログラム)という巨大な金塊を発見したときでした。

その親子は、金とは知らず、ドアストッパーとして長い年月使用した後、わずか3ドル50セントで宝石商に手放したといわれています。その金の価値は、現在の日本円で3500万円近いものです。

それから50年後の1849年。カリフォルニア州で金が発見されると、何万にもおよぶ採掘者らが、富を求めてサンフランシスコに移ります。プロのアメフトリーグ(NFL)のチームの一つであるサンフランシスコ・フォーティナイナーズ (San Francisco 49ers)の名はそこから付けられました。

これらのゴールドラッシュは、現代の金採掘の始まりを告げるものです。

そして、人間が数千年にわたって金を採掘しているにもかかわらず、このプロセスの複雑さは変わっていません。

今、鉱業はかつてないほど困難だといわれています。人々がテクノロジーを使用するようになったため、いくつかの鉱山では労働のきつさは変わったかもしれませんが、ライセンス無しには鉱物を採掘する権利がなく、それが、何年も前から鉱山生産の複雑さに貢献していることは変わっていません。

また、金鉱山の特定は、極めて困難な作業です。

地質学者、化学者、エンジニアらが金採掘の候補地を調査するのには、最大で10年かかる場合があります。

それでも、鉱山が生産的な金鉱に発展する可能性は0.1%未満です。

それらのうち、さらなる開発を行うのに十分な金を含んでいるのは10%だけです。

金の用途

しかし地上では、金は至る所にあります。私たちの指、首の周り、そして口の中にさえ。

金は産業用資源としても需要が高く、医学、建築、およびほとんどすべての電子部品に使用されています。

宇宙への打ち上げにも利用されています。

それは、信頼性の高い宇宙船回路の部品としてだけでなく、太陽の有害な熱や紫外線から宇宙飛行士のバイザーを覆うためにも使用されています。

これらすべてを念頭に置いて、地球上に実際に存在する金の量がどれほど少ないかを知ると驚くかもしれません。

金は、数が少なく希少価値が高い

世界中の地上に存在する金を全て溶かした場合、約19万トンだといわれています。

それは72フィート(約22メートル)の立方体を形成します。これを地球上のすべての人に均等に分割すると、すべての人がおよそ1オンス(28グラム)の純粋な24カラットの金を手に入れることになります。市場価値にして、約1500ドル(約16.5万)程度です。

では、地上にある19万トンの金を異なる業界で考えた場合、そのシェアはどうなっているのでしょうか。

最も高いシェアを占めるのは宝飾品業界で、約50%がジュエリーだといわれています。

次の続くのは、民間投資です。

ゴールドバーやコインとして金を保持する人、または、取引所で取引されるファンドのシェアを持っている個人かもしれません。

そして、中央銀行です。中央銀行は全体の金資本の約17%という非常に大きな率を保有しています。

そして最後の要素は、約13%、14%に相当するテクノロジー分野、または、歯科分野です。

金の未来は?

金の未来は、その光輝く表面と同じくらい明るいのでしょうか?

実のところ、金は見つけるのが困難になってきており、たやすく入手できなくなっています。

地質学者は、地球の地殻に埋められたまま残っているのは55,000トンだけであると推定。

つまり、現在の世界の採掘率がこのまま続いた場合、わずか20年で金の発掘が底をついてしまうのです。

したがって、斬新な金の採掘法が見つかったり、予想外の金鉱源が出現したりしない限り、金の採掘は引き続き減速する一方で、採掘コストの増加問題に対処するようになってくると、金はさらに高価になる可能性はあるようです。

参照元:Why Gold Is So Expensive | So Expensive